ロービーガンとは?加熱調理もしない生菜食のメリット&デメリット

色とりどりのフルーツ

今話題のビーガンやベジタリアンなどの菜食。

一口に菜食と言ってもその種類は多岐に渡り、細分化すると10種以上の菜食があります。

健康改善だけでなく、環境保全や動物愛護など、様々な動機から実践者が増え続けている菜食ですが、その中から今回は、欧米を中心に「身体に良いか悪いか」の議論が加熱しているロー・ビーガン(Raw Vegan)という食生活について解説します。

ロービーガンとは?

ズッキーニで作るパスタ

まずはロー・ビーガン(Raw Vegan)という言葉の意味から解説します。

ロービーガンのロー(Raw)というのは、英語で”生”という意味の単語で、ロービーガンを無理やり日本語に訳すとすると”生菜食(せいさいしょく)”となります。

生の植物しか食べないロービーガン

ロービーガンは、植物性かつ、基本的に生(未加熱)のものしか口にしない食生活です。

生のものしか食べない食生活は総称してロー・フディズム(Raw Foodism)やローフードダイエット(Raw Food Diet)と呼ばれますが、その中でも植物に限定したものがロービーガンになります。

ちなみに広義のローフーディズムやローフードダエットには、お刺身などの生魚やユッケなどの生肉、生卵などの未加熱の食材を食べる種類もあるため、”植物性のみ”を強調するために”ビーガン”という単語を使います。

ロービーガンは火を使わないビーガン

ロービーガンは、「食べる食材・食べれない食材」に関して言うと、通常のビーガン(Vegan)と基本的に同じです。

ロービーガンとビーガン&ベジタリアンをわかりやすく比較すると、以下の表のようになります。

カテゴリー 牛乳 鶏卵 蜂蜜
ロー・ビーガン × × × × ×
ビーガン × × × × ×
ベジタリアン × ×

ロービーガンが食べるもの

ロービーガンのケールとひまわりの種のサラダ

基本的には乳製品や卵も食べないビーガンと同じロービーガンですが、この食生活の最大の特徴は、「野菜であろうと48℃以上で熱されたものは食べない」という点です。

ロービーガンの食生活では生野菜や果物、ナッツ、シード(種子)、スプラウト(もやしなど豆類の新芽)、海藻、マッシュルームなど、生のまま咀嚼でき、未加熱でも毒性のないものを使用します。

“ロー”は全く手を加えないことではない

ロービーガンは”未加工のものしか食べない”という表現をする人もいるため、野菜や果物をそのままかじっているような食生活を想像する方も多いと思いますが、食べやすいようにミキサーにかけたり、野菜を麺のように細くしたりなどの加工は一般的です。

また、植物油も、低温圧搾などの熱を使わない抽出法であれば口にすることができますし、厳密には”生”ではありませんが、発酵食品を取り入れているケースもあります。

栄養素の破壊を避けるための生食

焚き火

ロービーガンは基本生で未加工のもの、熱が加わったとしても48℃までのものしか口にしませんが、この温度設定は栄養素の破壊を防ぐためにあります。

野菜に含まれる特定のビタミンやミネラルなどの栄養素や酵素が加熱調理によって破壊されてしまうのは事実で、そうした栄養素の中には48℃以上の熱で破壊が始まるものも多々あり、そのために基準としてこの温度を使用しています。

食べ物の加熱を悪とする視点も

野菜などの植物に含まれるビタミンなどの栄養素、ファイトニュートリエント(Phytonutrients)を無駄なく摂取したいという動機に加え、加熱によって身体に有害な物質が発生すると考える人もいます。

野菜の加熱で有害物質が発生するという主張を裏付ける科学的根拠はありませんが、肉類を焼いた時に発生するPAH(多環芳香族炭化水素)は発がん性が認められいて、その延長で「加熱 = 有害」という見解が広まったと考えられています。

環境保全的な動機もあるロービーガン

広大な山々と農地

健康への懸念や体調改善を動機とする実践者が多いロービーガンですが、環境保全的な動機を持って実践する人もいます。

動物性食品の生産過程における環境負担は多大であることは疑いようがありませんが、それらを口にしないだけでなく、「調理のガスや電気も使用しない方がエコ」という考えを持つ人もロービーガンにはいます。

スピリチュアル要素も強いロービーガン

ロービーガンでの食の選択には、「加熱によって栄養価が高まる/栄養の吸収がよくなる」等の栄養学的視点が取り入れておらず、栄養学よりもスピリチュアルな要素の強い食生活です。

“ビーガンの更に厳格なもの”という認識もされるロービーガンですが、ビーガンはあくまで栄養学を重視するため、どちらかと言えば陰陽思想を重んじるマクロビに近い起源といえるでしょう。

ロービーガンのメリット&デメリット

カラフルなオレンジとザクロとみかん

さて、客観的に見るとちょっと極端すぎる食生活にみえるロービーガンですが、もちろんメリットも存在します。

賛否両論であることは間違いないロービーガンですが、代表的なメリット&デメリットを簡単に解説していきます。

ロービーガンのメリット

まずはメリットから。

ロービーガンの実践者には、「体調がよくなった」などのポジティブな結果も報告されていますが、それにはロービーガンダイエットによる以下のようなことが関係していると考えられます。

  1. 加工食品の摂取が減る
  2. 減量への効果大
  3. 病気の予防・改善に繋がる
  4. 抗酸化物質による美容効果

メリット1. 食品添加物の摂取が減る

ロービーガンは、熱を使わないだけでなく、加工も極力避ける食生活です。

健康被害が懸念される保存料や化学調味料など、化学的に手を加えた添加物の多くは、加工食品から私たちの体内に取り入れられています。

そのような物質の摂取を排除できることは、ロービーガンの大きなメリットのひとつと言えます。

メリット2. 減量への効果大

野菜はそもそもグラムあたりのカロリーが低いことに加え、食べやすくするための加熱調理もしないため、かなりの量を食べないとカロリーオーバーにはなりません。

生の野菜は咀嚼にも時間がかかりますし、満腹まで食べても1日分の摂取カロリー目安を越えることが難しいほどで、実践者のほとんどが全員がロービーガンによる体重減少を経験しています。

メリット3. 病気の予防に繋がる

日本人の死因上位である心疾患や脳血管疾患は、肉などが含む動物性脂肪の摂取と大きく関連しています。

そのような食べ物を摂取しないロービーガンでは、これらの疾患リスク低下に繋がる可能性があります。また、肥満解消によって糖尿病などのリスクも下げることが可能です。

メリット4. 抗酸化で美容効果

フルーツを多く摂取するロービーガンでは、それらに含まれるポリフェノールなどの抗酸化作用のある物質を多く体に取り入れることに繋がります。

抗酸化物質にはアンチエイジング効果があるとされているため、ロービーガンの実践によって美容効果も期待できます。

ロービーガンのデメリット

ヘトヘトで倒れ込んでしまった少女

かなり極端で制限の多いロービーガンにも、上記のようなメリットがあることは事実です。

しかし、菜食文化の進んだ欧米でも多くの人が失敗に終わっていて、注意が必要な食生活でもあります。

ロービーガンの実践は非常に難しい

ロービーガンの一番のデメリットは、正しく実践することが非常に難しいということでしょう。

「生の野菜や果物だけを食べる」ということ自体は全く難しくはありませんが、それらだけから微量栄養素を含む、人間が1日に必要とする栄養全てを取るにはかなりの知識と努力が必要です。

大量に食べないといけない

ロービーガンのメリットで「痩せる」とお伝えしましたが、ロービーガンの食材だけでは必要摂取カロリーを上回ること自体難しく、逆を言えば、十分な栄養摂取が難しい食生活と言えます。

また、生の野菜は大量に食べたつもりでも栄養の密度は低いため、もともとたくさん食べられる人でないと健康体を保つのは難しいかもしれません。

※ちなみに野生のゴリラはロービーガンですが、起きている時間の半分を食事に費やしています。

完璧な実践が恩恵を受ける条件

たまにオシャレとしてロービーガンフードを食べる程度なら体がスッキリしたりもするでしょうが、フルタイム実践の場合、栄養不足の状態が継続しがちで、肌や髪の毛のトラブル、ホルモンバランスの乱れによる疲労や生理不順などにも陥る可能性があります。

毎日食に細心の注意を払い、微量栄養素を含め必要な栄養を全て摂取した場合に限り、上述したようなロービーガンの恩恵を受けられると言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は、欧米で議論が加熱しているロービーガン(Raw Vegan)についてお伝えしました。

日本では、流行りのデトックス感覚でしかないロービーガンですが、海外では24時間365日、フルタイムでロービーガンを実践している人もいます。

ベジタリアンやビーガンなどの普通の菜食に比べると実践者は少ないローフーディストですが、「こんなものもあるんだ」くらいに頭に入れておいておくと、いざというとき役に立つかもしれません。

見た目のオシャレ度も高く、インスタ映えするレシピも多いロービーガンなので、実践してみるのも良いかと思いますが、その際は、ぜひ栄養面のことも少し考慮してみると良いでしょう。