ヴィーガン代替肉30社!フェイクミートや疑似肉、もどき肉の種類とメリット&デメリット

代替肉のプラントベーストミートでできたヴィーガンハンバーガー

欧米から広まり、今や日本でも実践者が増えているヴィーガンやベジタリアンなどの菜食主義。

動物愛護や環境問題、自身の健康など、様々な理由で「肉を食べない」と決める菜食主義ですが、「お肉が嫌いだから」という人は意外にも少数派。

「お肉の味は好きだけど食べない」という菜食主義者にとって疑似肉は欠かせないだけでなく、食べると環境や健康にも良いと話題に。

そんなフェイクミート市場では、見た目から食感、風味までもそっくりな「最高のもどき肉」の開発を目指し、世界中の企業がしのぎを削っています。

そこで今回は、世界で大注目の代替肉にはどんな種類があるのかを探り、もどき肉を食べるメリット&デメリットまで深堀りしていきます。

なぜ今、疑似肉がブームなの?

海外で大流行の植物性代替肉を食べる女性

疑似肉の話を聞いて、「お肉を食べないと決めたのに、お肉を食べたがる」というヴィーガンやベジタリアンの矛盾に、首をかしげた人も少なくないでしょう。

「お肉食べたいなら食べれば良いじゃん」
「そこまでする意味がわからない」
「ヴィーガンやベジタリアンはやせ我慢してる」

そんな声も聞こえてくる代替肉トピックですが、まずはさくっと前提条件をおさらいしておきましょう。

疑似肉や代替肉、もどき肉の定義

もどき肉やフェイクミート、代替肉(だいたいにく)など、様々な名のつく「本当はお肉じゃない、お肉のような食品」たち。

使う人や場所によって呼び名は様々ですが、疑似肉もフェイクミートも基本的に同様の食品を指す言葉で、「豆や穀物などの植物性原料のみを使い、加工することで見た目や味をお肉に似せている食品」という意味です。

一覧にすると、ざっと以下のような言葉が使われています。

  • 代替肉(だいたいにく)
  • 疑似肉(ぎじにく)
  • もどき肉
  • 植物肉
  • フェイクミート
  • プラントベーストミート(プラントベースミート*)
  • ヴィーガンミート
  • ミートアナログ(アナログミート*)

*日本語の造語で、日本国内のみで使われます。

日本国内では基本的にどれを使っても問題なく通じると思いますが、アメリカやイギリスなど菜食が浸透している海外では、プラントベーストミート(Plant-based meat)が最も一般的に使われる単語です。

日本では大豆ミートやソイミート、大豆肉などとも呼ばれますが、大豆を原材料に使わないタイプは代替肉(だいたいにく)又は疑似肉と呼ばれることが多いです。

※ 日本の特許文献などでは「肉様食品」のように「様」が使われています。「〜の様な」と普段の会話で使うのと同じ意味です。魚に似せた食品であれば「魚様食品」、牛乳に似せたものは「乳様飲料」のように記載されています。

100%植物性が疑似肉の定義

日本の食卓に欠かせないカニカマなども「カニそっくりな、本当はカニじゃない食品」ですので、「肉に似せた食べ物」である疑似肉やフェイクミートとして捉えることができます。

しかしながら、現代において疑似肉と呼ばれる食品は「100%植物性」であることが共通条件となっていて、動物性を原材料(魚のすり身や卵など)に使うカニカマは、ここで言う代替肉や疑似肉には当てはまりません。

もちろん言葉の定義は人それぞれですが、本記事ではカニカマのような「動物性 → 動物性」の食品は代替肉に含めず、「植物性 → 動物性」の食品のみ取り上げていきます。

急成長中のフェイクミート市場

NAQDAQ上場も達成したビヨンドミートなどの代替肉企業

完全植物性のバーガー肉を開発するビヨンドミート社(米国)のNASDAQ上場や、マクドナルドの100%植物性バーガーなどでも話題の代替肉ですが、市場の成長速度からもその注目度の高さが伺えます。

数々のマーケット調査機関が代替肉市場の成長予測を発表していますが、最新のリサーチによると、2025年に世界の疑似肉市場は約3兆円(280億ドル)まで拡大すると見込まれています。

毎年20%以上増の急成長市場

世界中で植物肉が大流行した2020年時点でも、市場規模はまだ数千億円程度とされる代替肉ですので、この先数年間での成長がいかに急速なものか見て取れます(ソース)。

他にも、2027年まで毎年20%の成長が見込まれるとしたレポートや、英国バークレイズによる「2030年に肉の10%が代替肉になる」との試算もあり、これが現実となれば2030年の代替肉の市場規模は15兆円にものぼります。

ヴィーガン人口急増が背景に

多くの企業が植物肉開発に力を注ぎ、代替肉市場が成長を続ける背景には、植物性食品への急速な需要の高まりがあります。

完全植物性のプラントベースミートは、豆や野菜など、植物しか口にしないヴィーガンでも食べられる食品です。

日本でも最近話題のヴィーガンやベジタリアンなどの菜食主義ですが、海外における食生活の菜食化は日本では想像もつかないほど急速に進んでいます。

疑似肉需要を押し上げる菜食主義者が最近どれくらい増加したのか、こちらも数字でチェックしてみます。

ヴィーガンが6倍増のアメリカ

肉食文化のイメージも強いアメリカですが、後述するビヨンドミートやインポッシブルフーズなど世界を牽引する代替肉が生まれた地でもあり、近年菜食化が顕著な国の一つに挙げられます。

ある食品トレンドリサーチでは、2014年から2017年の3年でヴィーガン人口が6倍に増加したと報告されており、2020年にはアメリカの4人に1人が肉の消費を減らしたとするデータもあります。

人口約3億3,000万人のアメリカ。単純計算で2,000万人近くが菜食主義者で、7,500万もの人が以前より動物性食品を減らした食生活を送っていることを意味します。

菜食主義者670万人のイギリス

ヨーロッパでは、1985年創業のクオーン(詳細後述)など古くから疑似肉が浸透していますが、クオーン発祥の地であるイギリスも、最近急速に菜食主義人口が増加している国の一つです。

2020年の調査では、人口の12%以上にあたる670万人がお肉を食べない食生活を送っているとされていて、そのうちヴィーガンは130万人程度と推計されています。

こうした流れもあって、首都ロンドンには150軒以上ものヴィーガンレストランが立ち並ぶなど、ロンドンは「世界で最もヴィーガンが住みやすい街」にも選出されています(ソース)。

その他にも、ドイツやスウェーデン、オーストラリアなどでもヴィーガンの人口増加が進んでおり、こうした実態が、疑似肉産業の成長を後押ししている大きな要因となっています。

菜食主義者以外も取り入れるヴィーガン食

さらに、「ヴィーガン向け」のイメージが強い代替肉ですが、購入者の大部分が菜食主義者じゃない人(本物のお肉も普段から食べる人)だとするデータもあります。

ある市場調査では、2019年にビヨンドミートを購入した人の95%が雑食者(菜食主義ではない人)という結果が出ていて、競合のインポッシブルフーズも同様の試算を出しています。

また、他のアメリカにおける調査では、46%もの人が外食時に「ベジタリアンメニューを頼むことがある」と回答しています。

こうしたデータから、菜食主義以外の人々の間でも、お肉を植物性に置き換えることが一般化しており、代替肉産業の成長を後押ししています。

健康や環境問題意識の高まり

健康意識の高まりや環境問題顕在化で変わる食文化

ヴィーガンやベジタリアンの人口増加だけでなく、雑食者の献立の一部となることで飛躍的に成長している代替肉市場。

ですが、そもそもなぜ、普段から本物のお肉を食べている人でさえ、わざわざニセモノの疑似肉を食べるのでしょうか?

その背景には、「健康と環境」という2つの大きな問題意識があります。

詳細は別記事で解説していますが、ここではさらっと、この2大課題について見てみます。

健康意識の高まりとお肉への健康懸念

欧米諸国では健康意識の高まりに伴って、砂糖や乳製品、グルテンなど、様々な食材への健康懸念が広がり、人々の食生活に変化をもたらしています。

近年の研究では、ビーフパティなどのお肉も、健康への影響が懸念される食品にリストアップされることがあり、こうした事情もあって、完全植物性の代替肉が注目を集めています。

WHOが牛肉を発ガン性物質に指定したことは記憶に新しいですが、他にも血管系の疾患に繋がると言われる飽和脂肪酸やTMAOなど、欧米諸国では「動物性食品の食べ過ぎは健康に良くない」という認識が広まっています。

菜食による健康への影響については別記事でも詳しく解説していますが、こうした健康意識の変化が、「お肉好きな人でさえ植物肉を選ぶ」という行動の背景にあります。

環境問題への危惧とお肉による温暖化

海外ではグレタさん、日本では脱炭素を宣言した菅首相など、何かと環境問題が話題な昨今ですが、海外では食べ物による地球への影響にも、度々スポットライトが当てられています。

地球温暖化と言えば、発電所の煙や自動車の排気ガスのイメージが強いですが、実は温室効果ガス全体の1/4は私たちの食べ物から出ているとされています(論文)。

食べ物の中で特に環境への影響が大きいのがお肉で、ビヨンドミートの試算では、本物のお肉を植物肉に置き換えることで、温室効果ガスを90%減らせると出ています。

ビニール袋の代わりにエコバッグを持参したり、電気自動車に買い替えたりすることと同じように、食のエコ需要が高まったことも、フェイクミートが多くの人に選ばれる背景にあります。

大注目の疑似肉ブランド一覧:お肉編

ヴィーガン対応の代替肉はバーガーキングでも購入可能

ブラントベースミート大流行の裏側に、市場成長への期待など、背景がつかめたところで、ここからは世界中で大注目の代替肉ブランドを厳選してご紹介します。

スタートアップから超大手企業まで、企業規模を問わずに開発が進められる植物肉ですが、それぞれに使う原材料や加工法も多種多様。

日本ではいつ、どこで購入できるの?ビヨンドミートの次に上場するのはどのスタートアップ?味は本当に美味しいの?

気になる情報をまとめてお届けします。

ビヨンドミート(Beyond Meat)

まずご紹介するのが、世界で最も成功している疑似肉メーカーとも言えるビヨンドミート(Beyond Meat)。

肉汁したたり落ちるハンバーガーパティ、ビヨンドバーガー(Beyond Burger)を中心に、チキンやソーセージ、ミートボールなど様々な代替肉製品を開発しています。

2009年にアメリカ・カリフォルニアで創業したビヨンドミートは、ビル・ゲイツを含む有名投資家たちから総額150億円以上の資金を集め、2019年に代替肉ブランドとして史上初の上場(NASDAQ)も果たしています。

生肉店からマクドナルドまで取り扱うビヨンドミート

ビヨンドミートの特徴は、味や食感はもちろんのこと、「生の状態で販売し、焼いて食べる」という調理体験までも本物のお肉を再現しています。

肉の特徴が忠実に再現されていることから、世界で初めてスーパーの生肉コーナーに陳列されたフェイクミートとなり、マクドナルドやケンタッキーフライドチキンでも取り扱いがあります(ソース)。

ビヨンドバーガーの原材料は?

ビヨンドミートの代表作、ビヨンドバーガーはえんどう豆(Pea)のタンパク質が主原料で、ジューシー感の再現のためにキャノラー油やココナッツオイルなどの植物油、風味づけに天然香料を使用しています(Beyond Meat公式)。

また、本物そっくりな肉汁の演出には、赤紫色のカブのような植物であるビーツのエキスを使用し、「お肉の血っぽさ」までも表現しています。

2020年には栄養面を強化したアップグレード版もデビューしており、「本物の肉以上」を目指して開発を続けています。

ビヨンドミートについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、よろしければチェックしてみてください。

インポッシブルフーズ(Impossible Foods)

ビヨンドミートについで注目を集めているのが、同じくアメリカ発の疑似肉スタートアップ、インポッシブルフーズ(Impossible Foods)。

スタンフォード大学の教授を中心に2011年に創業されたインポッシブルフーズ社は、これまでにビルゲイツなどの有名投資家や大手ベンチャーキャピタル(VC)から、総額1,400億円以上資金を集めています。

既に企業価値は4,000億円を超え、数年以内の上場も期待されているインポッシブルフーズ社ですが、特筆すべきはビヨンドミートより美味しいと言われるインポッシブルバーガー(Impossible Burger)のクオリティです。

真似できない高い技術力

ビヨンドミートより美味しいと言われるほどのクオリティーは、インポッシブルフーズが持つ数々の特許技術が裏側にあります。

中でも最も特徴的なのが、肉々しさ演出の鍵となっているヘム鉄の製造技術で、本来お肉にしか入っていない成分を植物だけ生み出すことに成功しています。

このヘム鉄によって、ビヨンドバーガーよりもリアルにお肉のジューシー感や風味を再現しています。

独自の技術と圧倒的な資金調達で販路拡大も進め、米国全土のスーパー8,000店舗以上で購入可能で、さらに全国のバーガーキング7,500店舗、スターバックス1万5,000店舗でも取り扱いがあります。

インポッシブルバーガーの原材料は?

気になる原材料ですが、先述のビヨンドミートはえんどう豆を使用している一方、インポッシブルバーガーは大豆が主原料の植物バーガーです(インポッシブルフーズ公式)。

大豆は人によってはアレルギーの懸念もある食材ですが、タンパク質含有量はえんどう豆よりも多く、代替肉の原材料としてはとても優秀な食材です。

その他、脂肪分にヒマワリ油を使うなど、ビヨンドミートと異なる原材料も入っていますが、基本的にどちらも「豆のタンパク質 + 植物油 + デンプン質 + 香料」という構造で、ヘム鉄の有無が一番の違いです。

なお、インポッシブルフーズはチキンなどは販売しておらず、バーガーパティー(ひき肉)のみ。一意専心で更なる美味しさを目指しています。

ガーデイン(Gardein)

2003年にカナダで創業したガーデイン(Gardein)も、北米を中心に有名な代替肉ブランドの一つです。

上述のビヨンドミートやインポッシブルのようなセンセーショナルな話題は無く、日本での知名度も低いガーデインですが、ビヨンドミートより6年も早く創業し、北米だけで2万店舗以上のスーパーで売られています。

2014年には年間売上高1兆円を超えるアメリカの食品会社、コーンアグラ・ブランズ(Conagra Brands)社に150億円超で買収され、以降は同社の傘下ブランドになっています。

元シェフ開発のプラントベースミート

ガーデインは商品ラインナップが豊富で、最近アップグレードされたバーガーパティに加え、チキンナゲットやポークソーセージ、ビーフジャーキーやフィッシュフライ、スープなど、約60種類もの商品を販売中です(Gardein公式)。

一方で、ビヨンドミートやインポッシブルのような特筆すべき技術は持っておらず、各種味のクオリティーもあまり高くなく、「本物のお肉とは似て非なるもの」というのが正直なところ。

ですが、ポークソーセージなど、電子レンジでチンするだけで食べられる商品もあり、他社を圧倒するバリエーションの多さと調理の手軽さを理由に、菜食主義者からの支持を集めています。

ガーデインの原材料は?

牛肉に豚肉、鶏肉に魚など、商品群も多岐に渡るガーディアンですが、大豆、えんどう豆、小麦のタンパク質を主原料に使用しています。

弾力などの食感や、噛んだ時にほぐれる繊維質など、原材料を変えてお肉の特徴を表現しています。

また、アレルゲン対応としてソイフリー(大豆不使用)やグルテンフリー(小麦不使用)の商品を展開し、コーシャー(Kosher)認証も取得するなど、ヴィーガンやベジタリアン以外にも配慮した商品展開も特徴です。

ナチューリ(Naturli)

北欧発のプラントベースミート、ナチューリ(Naturli)は、ヨーロッパ圏で注目の代替肉メーカーです。

ナチューリは、サステイナブル領域で最先進国とも言える北欧デンマークで、今から30年以上も前の1988年に創業

疑似肉に加え、バターやアイスクリームなど乳製品の代替品も展開しており、2018年のイギリス進出を機に、業界注目ブランドの仲間入りを果たしています(Naturli公式)。

菜食化の波に乗って疑似肉に参戦

数十年以上にわたり、デンマークでヴィーガン向け食材を販売するナチューリですが、代替肉市場に参入したのは2014年で、それまではプラントベースミルク(牛乳の代替品)が専門の会社でした。

ビヨンドミートなどの成功事例もあって疑似肉の開発に踏み切り、ナチューリのミンチ肉は現在、イギリスの大手スーパーセインズベリーズ(Sainsbury’s)400店舗に加え、ドイツ、スウェーデン、ポーランド、オーストラリアでも販売されています。

ナチューリバーガーの原材料は?

ナチューリバーガーの主な原材料は、あのビヨンドミートと同じえんどう豆(Pea)です。

さらに、弾力を付与するためにグルテン(小麦タンパク)、生肉を表現する赤の色素としてはビヨンドミートと同じビーツ(赤かぶ)に加え、トマトも使用しています。

その他、香料などいくつか添加物も含むナチューリですが、原材料は計10種で、ビヨンドミート(17種類)よりも遥かに少なくなっています。

最先端のビヨンドミートやインポッシブルに比べると味の面で劣るナチューリですが、添加物を気にするより健康志向な消費者層をターゲットにしており、これからの成長に期待が寄せられています。

注目の疑似肉メーカー8選

上記以外にも、40年以上前に設立された老舗企業から出来立てほやほやのスタートアップまで、世界中には様々な疑似肉が存在します。

ここからは、上の4つに負けず劣らずな大注目疑似肉ブランドを紹介します。

アルファフーズ(Alpha Foods)

2015年創業のアルファフーズ(Alpha Foods)は、プラントベースフード激戦区のアメリカ、カリフォルニアで注目のスタートアップのひとつ。

大豆や小麦から作る疑似肉に、ピザやブリトーなど温めるだけで食べられる調理済み商品のラインナップが豊富アルファフーズは、これまでに40億円以上の資金調達を行っており、コロナ禍の2020年にも新たに約30億円を増資しています。

ウォールマートなど既に全米9,000店舗以上での取り扱いもあり、近年売上を伸ばす調理済みヴィーガンフード領域でのトップを狙って成長を続けています。

クオーンフーズ(Quorn Foods)

イギリス発のクオーンフーズ(Quorn)は1985年創業の老舗疑似肉ブランドで、バーガーパティやソーセージ、ミートボールなど計70種類以上の商品を展開しています。

ヴィーガン肉は通常お豆から作られるのが一般的ですが、クオーンの原材料はマイコプロテイン(Mycoprotein)と呼ばれる菌でてきたのタンパク質

きのこのようなイメージ(実際にはきのことは異なります)で培養されるマイコプロテインですが、独特の繊維質がお肉の食感に近く、菜食主義者の多いヨーロッパと北米で一定の人気があります。

原材料の結合役として卵を使っていましたが、2011年には卵の代わりにお芋のタンパク質を使ったヴィーガン版もデビューしています。

モーニングスターファームズ(MorningStar Farms)

コーンフロスティでも有名なケロッグ社が展開するモーニングスターファームズ(Morning Star Farms)も、1975年にアメリカでデビューした代替肉の老舗中の老舗。

「アメリカで初めて豆から代替肉を作ったのはモーニングスターファームズ」とも言われており、今となっては当たり前の「豆からできたお肉」の先駆け的な存在でもあります。

主に大豆タンパクを主原料に様々な冷凍食品を展開中ですが、2020年登場の生肉っぽいバーガーパティ、Incogmeato(インコグミート)を皮切りに、「よりリアルな疑似肉」の開発に注力しています。

フィールドロースト(Field Roast)

アメリカ、シアトル発のフィールドロースト(Field Roast)も、1997年創業ながら近年さらなる成長を見せる疑似肉ブランドの一つです。

豆由来の代替肉が多い中、フィールドローストは穀物ベースで小麦や大麦が主原料。豆ベースの疑似肉とは少し違った弾力と食感が楽しめます。

また、香りや旨味づけには香料を使うメーカーが多い中、椎茸を含む3種類のきのことニンニク、玉ねぎなどで旨味を演出しているのも特徴です。

動物実験に反対してカナダでの販売を2014年に一時中止するなど、ヴィーガンからの評価も高いブランドで、2018年には大手食品会社に120億円以上で買収されて以降も成長を続けています。

サンフェドミーツ(Sunfed Meats)

2015年にニュージーランドで創業した疑似肉スタートアップ、サンフェドミーツ(Sunfed Meats)も、オーストラリアなどオセアニア地域を中心に大注目のブランドです。

メイン商品の「鶏なし鶏肉(Chicken free Chicken)」、原材料に黄えんどう豆(Yellow Pea)を使用し、他にもベーコンやバーガーパティを開発しています。

これまで10億円近い資金調達を成功させ、ビヨンドミートにも出資した有名ベンチャーキャピタル、ニュークロップキャピタル(New Crop Capital)も出資しています。

ベジタリアンブッチャー(The Vegetarian Butcher)

2020年に日本(東京・池袋)に実店舗をオープンさせて話題になったベジタリアンブッチャー(The Vegetarian Butcher)は、2010年オランダ創業のプラントベースミート会社。

大豆と小麦のタンパク質を主原料に、バーガーパティやソーセージなどベジタリアン向け商品を多数開発*し、2018年にはユニリーバ(Unilever)に買収されています。

※ 原材料に卵を含むベジタリアン食品がメインですが、卵不使用なヴィーガン対応商品も展開しています。

ベジタリアンブッチャーの植物肉には、ビヨンドミートのようなリアルさはありませんが、2015年のクラウドファンディングでは2億5,000万円以上を集めるなど、ヨーロッパを中心に根強い人気のある疑似肉ブランドです。

ライトライフ・フーズ(Lightlife Foods)

1979年に米国マサチューセッツ州で設立したライトライフフーズ(Lightlife Foods)も、北米を中心に大人気のプラントベースブランドのひとつです。

ヴィーガン対応のホットドッグやテンペなどが有名なライトライフフーズですが、2019年には生のミンチ肉を模した商品開発にも成功しており、この“生”疑似肉はビヨンドミートと同じ、生肉セクションで販売されています(ライトライフフーズの牛肉もえんどう豆由来)。

2017年に約150億円でカナダのメープルリーフフーズ社(Maple Leaf Foods)に買収されましたが、大手の販路や開発力も活用したさらなる成長が期待されています。

トーフーキー(Tofurky)

1980年にアメリカで創業したトーフーキー(Tofurky)は、アメリカで愛される老舗疑似肉ブランド。

豆腐とターキー(七面鳥)の二単語を混ぜ合わせた愛嬌のあるブランド名が特徴的で、その名の通り大豆でできたターキー疑似肉を中心に、ハムやチキン、ミンチ肉などを展開しています。

多額の資金調達や大手による買収、上場も話題の疑似肉スタートアップですが、トーフーキー年商15億円以上の今でも家族経営*を続けています。

※ 株主のほとんどが家族であるという意味で、従業員は50人前後いるとされています。

数々の投資話を断り続けて家族経営を貫く創業者のセス(Seth Tibbott)は、お金に困っていた時期、「無料で住めたから」という理由で木の上のツリーハウスに7年間も住んでいたストーリーが有名です(ソース)。

大注目の疑似肉ブランド一覧:牛乳編

植物での代替が進む牛乳(ミルク)産業

ざっと挙げただけでもこれだけ多くの企業が代替肉の開発に力を入れる昨今ですが、牛肉や鶏肉に加え、100%植物からつくる代替乳、プラントベースミルクも注目を集めています。

日本でも大豆由来の豆乳や健康志向のアーモンドミルクなど、様々な代替ミルクを見かけるようになりましたが、世界ではフェイクミートに負けず劣らずの激しい競争が繰り広げられています。

なぜ植物性のミルクが注目なの?

プラントベーストミルクの流行の背景には、代替肉が求められる理由と同様に、環境問題や健康意識の変化があります。

牛乳の製造に牛が必要なのは当然のことですが、その牛から放出されるメタン(温室効果ガス)や、牛乳の生産で消費される大量の水資源など、環境問題の領域でいくつかの課題が顕在化しています。

また、飽和脂肪酸や成長因子(IGF-1)の存在、さらには乳糖不耐症の問題など、健康面においても牛乳の消費が懸念されることも増えつつあります。

激戦区のヨーロッパとアメリカ

こうした背景から100%植物性のミルクが注目を集めていて、ヨーロッパやアメリカを中心に、豆やナッツ、穀物など多様な植物から作る代替乳が数多く存在します。

世界の投資家からの視線も熱いスタートアップを中心に、注目の代替乳ブランドを紹介します。

オートリー(Oatly)

まず、今世界で最も勢いのある代替乳ブランドとも言えるのが、スウェーデンのオートリー(Oatly)です。

1990年創業と比較的長い歴史を持ちながら、代替乳ブームの流れに乗って一気に成長を加速させており、2019年の売上前年比2倍以上の210億円超となっています。

オートリーは2019年にアメリカと中国にも進出を果たし、2020年には200億円の増資をするなど、さらなる成長に向けて歩みを進めています。

オートミールからできた代替ミルク

オートリーが製造する植物ミルクはオーツミルクで、原材料は健康的な朝ごはんとしても人気なオートミールと同じオーツ麦です。

ナッツや大豆が主流な代替乳ですが、オートリーは長年に渡りオーツ麦を扱ってきた食品会社で、独自の特許製法によって、ほんのり甘く、牛乳に近い濃厚さもある植物ミルクを砂糖不使用*で生み出しています。

※ 甘み付けに砂糖や甘味料などの添加物は使用していませんが、とろみ付けや保存性の向上、栄養強化等の目的で添加物を使用しています。

オートリーのオーツミルク特許製法は日本のあま酒の製法が基になっていて、アミラーゼと呼ばれる酵素を使ってオーツ麦のデンプンを分解することで、甘さやとろみを付与しています。

オーツミルクは次世代植物ミルク?

少し茶色がかった白色のオートリーですが、ほんのりと感じる麦の香りや自然な甘さ、滑らかな口当たりが好評で、植物性ミルクで最も美味しい評さるクオリティです。

また、使用する原材料のトレーサビリティー(情報の透明性)にも力を入れていて、商品サイト上では添加物のひとつひとつまで産地を公表するなどの徹底ぶり。

ミルクの他にもアイスクリームやヨーグルトも商品展開し、近いうちの日本上陸にも期待がかかるプラントベースミルクです。

注目も疑似乳メーカー3選

センセーショナルな大流行を見せるオートリーですが、この他にも注目のプラントベースミルク企業が下記の3社です。

  • リプルフーズ(Ripple Foods)
  • カリフィアファームズ(Califia Farms)
  • デイヤフーズ(Daiya Foods)

アーモンドブリーズ(Almond Breeze)など、既に日本に進出している海外の代替乳ブランドもありますが、ここでは今後に期待のブランドを厳選しています。

リプルフーズ(Ripple Foods)

プラントベースフード激戦区の米国カリフォルニア発のリプルフーズ(Ripple Foods)も、注目の植物ミルクスタートアップです。

日本でも有名なハンドソープブランド、Method(メソッド)の創業者、アダム・ローリー氏が2014年に設立したリプルは、えんどう豆を主原料とした乳製品を開発しています。

豆からできているため従来の牛乳同様にタンパク質が豊富で、大豆不使用のためアレルギーの人でも飲める仕様となっています。

えんどう豆タンパク由来の代替乳は珍しく、これまでに190億円以上の資金調達しており、プロテインシェイクやアイスクリームなども展開しています。

カリフィアファームズ(Califia Farms)

同じく米国カリフォルニア発、カリフィアファームズ(Califia Farms)も注目で、2010年創業ながら調達資金が総額350億円を超える超大型スタートアップです。

元々はアーモンドミルクやヘーゼルナッツミルクなどのナッツ系ミルクが中心でしたが、上述したオートリーの成長を受けて近年はオーツミルクをラインナップに追加

北米で1,800店舗以上展開するスーパー、ターゲット(Target)が取り扱いを開始するなど、オートリーを上回る豊富な資金力を武器に急速な成長を続けています。

デイヤフーズ(Daiya Foods)

2008年にカナダで創業したデイヤフーズ(Daiya Foods)は、プラントミルクは作っていませんが、チーズやヨーグルトなど乳製品の代替品を多数展開する注目ブランドです。

タピオカデンプンから作るチェダーチーズが主力商品のデイヤフーズは、2017年大塚製薬が360億円で買収しており、近年中の日本上陸も期待されています。

日本ではモスバーガーなどの大手もヴィーガンバーガーの販売を開始しており、今後100%植物性でチーズバーガーなどを展開する際には、このデイヤのチーズが使用されるかもしれません。

大注目の疑似肉ブランド一覧:たまご編

スクランブルエッグなどの卵も植物代替食品が豊富

お肉と乳製品に次いで、ヴィーガンフードテック界で注目を集める食品が100%植物性の卵です。

「環境に良く、アレルギーでも食べられる。しかも、コレステロールゼロ。」という、驚異の代替食品として話題の疑似卵は、アメリカを中心に躍進中。

代替肉バーガーやオーツミルクなどと比べると多少盛り上がりに欠ける代替卵ですが、数々の有望スタートアップが開発に力を注ぐ領域です。

なぜ植物性の卵が注目なの?

動物性の食べ物の中では卵は環境への影響が少ないことが知られていますが、豆と比較すると卵の地球温暖化への影響は2倍以上

代替卵で先頭を行くジャスト社(Just)は、これまでに卵6,000万個分にあたる疑似卵を販売し、8,700トンのCO2を減らした発表しています。

環境への影響が半分以下の豆から卵を作ることで温暖化の抑止に貢献でき流ことが、代替卵が注目を集める理由の一つです。

卵アレルギーにも対応した代替卵

環境への影響以外にもうひとつ、卵アレルギーへの懸念も豆由来の疑似卵が注目される背景にあります。

卵アレルギーは一般的に子供に多い食物アレルギーですが、ヴィーガンに加え、卵を食べられない消費者からも疑似卵は支持を集めています。

日本国内でもキューピーや味の素が開発した卵アレルギー対応のマヨネーズ(卵不使用)が多くのスーパーで販売されていますが、卵アレルギーでも安心して食べられる食品への需要は、国を問わず潜在的に高いことが伺えます。

そんな、多方面から注目の植物卵を開発する超注目ブランドを、有名どころに絞ってご紹介します。

イートジャスト(Eat Just)

植物性卵の最先端を突っ走るブランドが、2011年にアメリカ・サンフランシスコで創業したイートジャストEat Just)です。

創業から7年間ハンプトンクリーク(Hampton Creek)という名でしたが、現在の正式名はイートジャスト。

卵不使用で完全植物性のマヨネーズ、ジャストマヨ(Just Mayo)で注目を集め、これまでに少なくとも300億円以上の資金調達に成功しています(ソース)。

2017年からは緑豆を原料にした植物性卵ジャストエッグ(Just Egg)の販売や、細胞培養肉*の開発にも着手し、今後への期待も大きいスタートアップです。

※ 細胞培養肉:家畜から細胞だけ取り出し、その細胞を培養する(人工的に育てる)ことで作られるお肉のこと。植物性の代替肉と異なり「本物の肉」。屠殺が不要で環境負荷も軽いことから、植物代替肉の次の技術として期待されています。

上場の期待も高まる疑似卵ジャスト

CEOのジョシュ・テトリック(Josh Tetrick)がメディアで叩かれたり、マヨネーズ大手のユニリーバ社に訴訟を起こされたりと、何かと話題が尽きないジャスト社ですが、現在は上場(IPO)を見据えて200億円超の新たな資金調達を進めています(ソース)。

ジャストの植物性卵は、本物の鶏卵の黄身と白身を混ぜたような液体状(ボトル入り)で販売されており、フライパンで加熱することで、本物の卵(スクランブルエッグ)と同じように固まっていきます。

また、植物性卵のクオリティーの高さはもちろんですが、2020年にはシンガポールで細胞培養肉の認可を得ており、世界初の細胞培養肉の発売にも期待が寄せられています。

植物性卵の原材料は?

ジャスト社の代替卵は主原料に緑豆(Mung Bean)のタンパク質を使用し、卵っぽい黄の色味付にはターメリックが使われています(Just公式)。

その他、油分としてキャノーラオイル、増粘剤としてジェランガムなどの添加物、天然香料なども含まれています。

また、植物性卵の製造方法に加え、主原料の緑豆タンパク素材もジャスト社が特許を取得しており、食品原料会社としての一面も持っています(特許)。

注目の疑似卵メーカー3選

植物卵の業界では、上記のジャスト社が圧倒的人気とシェアを誇っている状況ですが、独自路線でジャストに対抗するスタートアップもいくつか存在します。

ここからは、注目の植物卵ブランド3社をご紹介します。

オッグス(OGGS)

2018年にイギリスで創業したオッグス(OGGS)も、今後が期待のヴィーガンエッグ企業です。

創業間もないスタートアップで知名度もそれほど高くありませんが、創業2年目で植物卵や卵不使用のケーキ菓子の発売にこぎつけ、既にホールフーズ(Whole Foods)でも販売中

原材料も特徴的で、植物卵に使うのはアクアファバ(Aquafaba*)と呼ばれる水と豆(ひよこ豆)のみ。

一般的に多数の添加物を含むヴィーガン代替食品ですが、ホールフーズがいち早く取り扱いを開始したことからもわかるように、ナチュラル志向の消費者層からも注目度の高い商品です。

※ アクアファバ(Aquafaba)はAqua(水)とFaba(豆)を組み合わせた単語で、豆の茹で汁のようなシンプルな食品原料です。

フォローユアハート(Follow Your Heart)

1970年創業と、ヴィーガン食品界隈では老舗のフォローユアハート(Follow Your Heart)も、プラントベースエッグで注目のブランドです。

ヴィーガンマヨネーズのヴィーガネーズ(Veganaise)やヴィーガンチーズが主力商品のフォローユアアートですが、菜食ブームに後押しを受け、2015年からヴィーガンエッグの販売を開始。

大豆が主原料で、ジャスト社とは違い粉末状(調理前に水を加えて混ぜるタイプ)のプロダクトですが、本物の卵と同じパックにかわいく梱包されています。

ゼロエッグ(Zero Egg)

2018年創業のゼロエッグ(Zero Egg)は、第二のシリコンバレーとも呼ばれるイスラエル発のスタートアップです。

大豆タンパクとえんどう豆を主原料とするゼロエッグは、創業二年で8億円の資金調達成功させています。

2020年にはアメリカ市場への進出も果たしており、今後の成長に注目が集まっています。

その他、南米チリ発で120億円資金調達を実施したノットコー社*(NotCo)など、欧州や北米以外のスタートアップも植物卵に参入しています。

※ ノットコー社(NotCo)は2015年の創業以来、植物性マヨネーズなどの卵代替食品を開発していましたが、2020年から植物ミルクに切り替えています。

大注目の疑似肉ブランド一覧:お魚編

魚介類も植物性の代替魚が登場しツナ缶が人気

プラントベースフードといえば上記のお肉や牛乳、卵が目立ちますが、植物性の魚の開発おいても多くの企業がしのぎを削っています。

上に登場した代替肉会社が疑似魚の開発に着手する例も少なくありませんが、ここではプラントベースの魚を専門に開発する企業を紹介します。

なぜ植物性の魚が注目なの?

お肉と環境問題(特に地球温暖化)の繋がりは上述した通りですが、魚の消費に関しても近年懸念が広がっています。

例えば日本では、クロマグロやうなぎなどの乱獲により個体数が激減し、現在は「ほぼ獲れないレベル」まで達し、枯渇(絶滅)までも危惧される状況です。

日本以外でも同様の状況に陥っている地域は多々あり、今後の世界の人口増加や、それに伴う魚介類の需要の高まりに対応するために、よりエコで持続可能な魚介類が求められています。

広がる養殖ビジネスへの懸念

天然魚の漁獲量が減ってしまっても、幸いなことに、養殖技術の発展により、美味しくて質の高いお魚が安価に供給されているのが現状です。

ノルウェーのサーモン(鮭)や、近畿大学の近大マグロ、中国やインドネシアでのエビ養殖も成功例に挙げられますが、養殖では枯渇とは別の問題も浮上してきています。

狭い環境で大量の魚を飼育すると、病気の蔓延を防ぐ目的で殺菌剤や抗生物質などの薬剤は必要不可欠で、そうした薬剤が周辺の水域に流れ出ることによる自然界への影響が問題視されています。

また、沿岸を活用する養殖では、サンゴ礁やマングローブなどの生態系破壊に繋がる実態が懸念となっています。

こうした天然魚の枯渇問題や、養殖による環境破壊の懸念もあって、100%植物で作られる疑似魚が注目を集めています。

グッドキャッチフーズ(Good Catch Foods)

代替魚に特化して開発を進めるグッドキャッチフーズ(Good Catch Foods)は、フードテック界大注目のスタートアップのひとつに挙げられます。

アメリカで2016年に創業のグッドキャッチですが、創業メンバーにはホールフーズ(Whole Foods)や有名ベンチャーキャピタル出身者もいて、まだ何も商品を販売していない開発段階から注目を集めていたスタートアップです。

未開発の疑似ツナ開発に着手

実績あるメンバー5人で創業したこともあって投資家からの視線も熱く、創業4年で総額60億円の資金調達を実施しています。

さらに、グッドキャッチの主力製品はツナ缶のようなツナフレーク(マグロ)で、これまでどの代替肉メーカーも未着手だったリアルな植物魚の開発に注力しています。

ちなみに、私たち日本人が世界で一番多くの魚を食べていますが、ツナ缶の消費量はアメリカがダントツ1位ソース)。

ツナサンドなど、アメリカ食生活で需要も高いことから北米マーケットで人気で、北米各地1,000店舗以上での取り扱いがあります。

グッドキャッチフーズの原材料は?

植物性マグロの最先端を走るグッドキャッチは、その原材料も特徴的です。

グッドキャッチのツナの主原料は6種の豆をブレンドした特許取得済みのタンパク素材で、えんどう豆、ひよこ豆、レンズ豆、大豆、そら豆、インゲン豆が使用されています。

また、味だけでなく栄養面でも本物を目指しており、魚に含まれるオメガ3脂肪酸は海藻由来のオイルで強化しています。

注目の疑似魚メーカー3選

植物性魚介類の中ではグッドキャッチフーズが頭ひとつ抜けている状況ではありますが、これ以外にも期待の代替魚介類メーカーは世界中に数多く存在します。

近日中の販売開始に期待が寄せられるスタートアップから、じわじわと市場を拡大してきている注目の成長ブランドまで、さくっとご紹介します。

ニューウェーブフーズ(New Wave Foods)

100%植物のエビの開発に注力するニューウェーブフーズ(New Wave Foods)も、代替肉界隈で注目のスタートアップです。

2015年、アメリカの女性起業家二人によって創業されたニューウェーブは、海藻を主原料に使用しており、代替肉のスタンダートである豆由来とは異なる独自路線で開発を進めています。

新素材を使用したこともあり未だ販売まで達していませんが、見た目も食感もかなりリアルな出来栄えで、2019年には超大手食品会社のタイソン・フーズ(Tyson Foods)からも資金調達。

ここに来て経営者が入れ替るなど、創業当初のビジョン通りには進んでいないことが推察できますが、販売開始を待ち望んでいる人も多い代替海老ブランドです。

ソフィーズキッチン(Sophie’s Kitchen)

台湾出身の王(Eugene Wang)氏がアメリカで創業したソフィーズキッチン(Sophie’s Kitchen)は、ツナにエビ、スモークサーモンやホタテ、カニなど様々なヴィーガン魚介類を展開しています。

祖父母の世代から台湾でベジタリアン食品業*を営んでいた創業者が、アメリカでの菜食ブームに目をつけて2010年に起業した代替魚ブランドです。

※ 台湾は人口の10%程度が菜食主義者とされていて、素食や純素などと記載されたベジタリアン・ヴィーガン対応の食品を専門に扱うスーパーも街中で見かけます。

味や見た目のクオリティーは低いですが、えんどう豆や玄米、こんにゃくなどを主な原料とし、北米では菜食主義者から一定の人気があります。

マインドブロウン(Mind Blown)

マインドブロウンは、プラントベーストシーフード社(The Plant Based Seafood Co.)が開発する植物性魚介類ブランドで、エビ、カニ、ホタテの3種を販売しています。

米国バージニア州のグウィン島を拠点とし、社内は全員女性ということもアイデンティティーに、企業ブランディングを行っています。

こんにゃく粉やタピオカ粉を主原料にしていてエビやホタテのプリッと感は再現されていますが、栄養価は低く、今後の改善に期待がかかります。

植物性の次に来る細胞培養肉

ここまでは、総勢25社にも及ぶ世界のヴィーガン食品会社をご紹介してきました。

お肉に牛乳、卵、さらには魚介類まで、様々な動物性食品が植物に置き換わりつつある現代ですが、100%植物のプラントベースフードの進化版として、注目を集める技術があります。

それが、動物の細胞を人工的に育てて肉を製造する、細胞培養肉の技術です。

本物の肉の細胞を培養してステーキに?

「細胞を人工的に育てて…」と言われてもピンとこないかと思いますが、家畜から筋肉の細胞を取り出し(家畜は殺さず)、その細胞を培養液と呼ばれる液体に漬けて育てます。

要するに、動物の体内と同じような環境を人工的に作り、体の外でありながら、動物が成長していくのと同じように細胞を育てる技術です。

家畜を殺さない点で動物福祉に寄与するだけでなく、家畜が要らないので餌や水が不要で、メタンなどの温室効果ガスも出ないことから環境にも良いと考えられています。

クリーンミートとも呼ばれる細胞培養肉

屠殺もなく、環境にも優しいことからクリーンミート(Clean Meat)とも呼ばれる細胞培養肉ですが、その他にも以下の言葉が使われます。

  • ラボグロウンミート(Lab-Grown Meat)
  • セルカルチャードミート(Cell-Cultured Meat)
  • カルチャードミート(Cultured Meat)
  • カルティベイテッドミート(Cultivated Meat)
  • シンセティックミート(Synthetic Meat)
  • クリーンミート(Clean Meat)

細胞培養は、動物を殺さずとも細胞を使用することや、従来の技術では培養液に仔牛の血清(FBS: Fetal Bovine Serum)が必要なことから、必ずしもヴィーガンではありません。

しかし、後述する細胞培養系スタートアップを中心に、ここ数年で植物性の培養液の開発と普及が進んでおり、最新の技術を使えば細胞培養肉もヴィーガンとみなされるケースも増えています。

細胞培養肉の有力スタートアップは?

家畜の体の外で筋肉細胞を育て肉を生み出すクリーンミート技術ですが、アメリカ、オランダ、イスラエルを中心に以下の企業が開発に力を注いでいます。

上述した植物卵のジャスト(Just)も参戦しており、数百億円規模の豊富な資金を基に熾烈な競争が繰り広げられています。

日本でまだまだ注目度の低い細胞培養肉ですが、日本のスタートアップでオックスフォード大学卒の羽生さん率いるインテグリカルチャー(IntegriCulture)も、世界で注目を集めるクリーンミート企業に含まれます。

製造コストと認可取得が課題のクリーンミート

食料問題と環境問題双方の解決策として、将来的に必要不可欠とまで考えられている細胞培養肉技術ですが、現在の課題はコストと販売認可の取得です。

まずコストですが、2013年に世界で初めてお披露目された細胞培養肉(バーガー肉)は、なんとバーガーパティ1枚分で製造コスト約3,000万円ソース)。

当時は実験レベルであったため異常なコストでしたが、その後技術が飛躍的に発展し、2018年にはバーガー肉1枚あたり1万円程度、2020年には1枚1,500円程度までコストが下がってきています(ソース)。

それでもまだ通常のお肉と比べると高コストであり、市場に受け入れられる価格になるには少なくともあと数年かかる見込みです。

シンガポールで世界初の許認可

細胞培養肉は、理論的には本物の肉と同じなのですが、製造方法が従来と全く異なるため、食べることによる人体への影響も慎重に精査しなくてはなりません。

そのため、一般に向けて販売するには、国ごとに「この食べ物は人間が食べても良いよ(安全だよ)」という許可が必要になります。

シンガポールで2020年、ジャスト社の細胞培養肉が世界で初めて認可を得ましたが、細胞培養肉で許可を下したのは現時点でシンガポールただ一国のみ。

私たちの未来には必要不可欠なクリーンミートにとって、この認可は大きな光ではありますが、一般の市場に出回るようになるには安全性の担保も課題に挙げられます。

疑似肉を食べる健康メリット・デメリット

代替肉のヴィーガンバーガーを食べる男性

細胞培養肉は別記事で詳しく解説するとして、話題を植物性の代替肉に戻します。

ここからは、植物性代替肉の健康面でのメリット・デメリットについても見ていきます。

お肉の代わりに植物を食べるわけですから、なんとなく「ヘルシー」とか「ダイエット向け」なんてイメージも持ってしまいがち。

ですが、「植物だから健康に良い」なんてことはなく、例えばフライドポテトなんかは、100%植物性ですが健康的とは言えませんよね。

ここからは、代替肉のメリット&デメリットについて、正しく理解しておきましょう。

疑似肉の健康メリット

嬉しそうにハンバーガーを食べる女性

まず、お肉と植物肉の健康効果を比較する際に、本物のお肉の健康デメリットを知ることが重要な視点となります。

お肉について、「食べ過ぎはよくない」という感覚はほとんどの方が持っているかと思いますが、お肉は癌や心臓病、糖尿病などのリスク増に繋がるとする研究論文が多数存在します(論文1, 論文2, 論文3, 論文4, 論文5, 論文6, 論文7, 論文8, 論文9, 論文10, 論文11, 論文12, 論文13, 論文14)。

WHOが、牛肉などの赤肉やハムなどの加工肉を発ガン性物質に指定していることも、代替肉が流行している欧米では広く知られています。

お肉の健康デメリットについてもっと詳しく知りたい方は、別記事もご覧ください。

お肉を食べると癌になるの?

WHO(世界保健機関)によると、「1日あたり50g程度のお肉を食べることで、大腸ガン*のリスクが18%高まる」とされています。

これを「お肉を食べると癌になる」と解釈するのはさすがに乱暴ですが、長期間に渡って常習的にお肉を食べ続けると、腸のガンになる確率が高くなる傾向は、確認されています。

WHOの報告には、厳密には Colorectal Cancer と書かれていて、日本語に訳すと「結腸直腸癌」となります。

お肉で心臓病や糖尿病になる?

ガンの他にもお肉は、心臓病や糖尿病のリスク増加に繋がるとも考えられています。

ある研究は、普段からお肉を食べることで心臓病のリスクが最大42%も高まる可能性があると示唆しています。

また、お肉によって糖尿病のリスクが30%も高まるとした研究が存在するのも事実です。

お肉を減らすことは健康なのか?

こうした研究結果の背景には、お肉特有の様々な物質*があるとされていますが、細かいことはさておき、お肉を減らすことが健康に寄与する可能性は、間違いなく存在してると言えるでしょう。

実際にビヨンドミートを初め、代替肉スタートアップの多くはこうした「本物のお肉のデメリット」を利用した健康訴求を使っていて、ここが植物肉を食べる最大の健康メリットと言えるかもしれません。

※ 飽和脂肪酸やPAH、TMAO、IGF-1などと呼ばれる物質。詳しくは別記事でも解説しています。

ただし一方で、お肉を食べないことによる栄養失調のリスクが存在するのもまた事実で、「お肉を食べない方が、お肉を食べる食生活よりも健康的」とも言い切れません。

ヴィーガンなどの菜食主義で不足しがちな栄養素については別記事で詳しく解説していますので、興味のある方はチェックしてみてください。

疑似肉の健康デメリット

不健康な代替肉のデメリット

お肉の量を減らしたり、食べなくすることで病気のリスクが下がる可能性があることは上述の通りですが、では、お肉を食べない代わりに疑似肉を食べることは、本当に健康的と言えるのでしょうか?

お肉にお魚、卵に牛乳など、様々な食品を植物だけで再現するプラントベースフードですが、気になるのは添加物の多さです。

本当に安全なのか、詳しく確認してみましょう。

19種もの原材料を使うビヨンドミート

例えば、植物肉の最先端を行くビヨンドミートには、19種類の原材料が使われています。

最新版ビヨンドミートの原材料を一覧でみてみます(含有量が多い順に記載されています)。

水、えんどう豆分離タンパク、圧搾キャノーラ油、精製ココナッツオイル、玄米タンパク、天然香料、ココアバター、緑豆タンパク、メチルセルロース、ジャガイモ澱粉、りんご抽出物、ざくろ抽出物、塩、塩化カリウム、酢、濃縮レモン汁、ヒマワリレシチン、ビーツ抽出液(英語版:Water, Pea Protein Isolate*, Expeller-Pressed Canola Oil, Refined Coconut Oil, Rice Protein, Natural Flavors, Cocoa Butter, Mung Bean Protein, Methylcellulose, Potato Starch, Apple Extract, Pomegranate Extract, Salt, Potassium Chloride, Vinegar, Lemon Juice Concentrate, Sunflower Lecithin, Beet Juice Extract

数も多く、体に害がないか心配になりますが、「添加物 = 体に悪い」とも言い切れませんので、どんな添加物が使われているのか詳しくみていきましょう。

代替肉の原材料は意外とシンプル

「添加物 = 有害」と言い切れない理由は、例えばお豆腐を作るのに欠かせないニガリも別名「塩化マグネシウム」で、立派な食品添加物です。

「お豆腐もニガリ(添加物)が入ってるから体に悪い」と考える方々に意義は申しませんが、添加物は体に有害なものだけではないという認識も、公平な判断には欠かせません。

そうした前提からビヨンドミートの原材料を細かく見てみると、植物タンパクを主原料に、植物油やデンプン、天然香料など、多くの加工食品に含まれる一般的なものしか使っていないことがわかります。

遺伝子組み換えが心配されるキャノーラ油もビヨンドミートは遺伝子組み換えなしで、トランス脂肪酸もゼロと表示されています(ビヨンドミート公式)。

代替肉による健康被害の可能性は低め

代替肉に使用される添加物はアメリカではFDA(食品医薬品局)、欧州ではEFSA(食品安全機関)などで安全性が確認されており、ビヨンドミートなどを食べることで健康被害が出る可能性は低い*と考えられます。

※ 豆が主原料ですので、食物アレルギーの方はご自身の判断で十分にご注意ください。

ただ、代替肉を食べることが、お野菜やお豆をそのまま食べるように健康的かと言うとそうではありません。

そのままの野菜や豆など、ホールフードの健康メリットは広く知られていますが、代替肉は植物性ですが加工度が高く、そうしたお野菜やお豆などの本来の健康メリットはない食品です。

ダイエット効果も見込めない代替肉

また、完全植物性ということでダイエット効果も噂されるプラントベースフードですが、結論から言うとダイエット効果は無しです。

本物の牛肉と代替肉(ビヨンドミート)の栄養価の比較表をみてみましょう。

栄養価 牛肉 代替肉
カロリー 283kcal 260kcal
脂質 17g 18g
糖質 0g 3g

※ 代替肉の栄養成分値はビヨンドミート公式サイトより、牛肉パティーの栄養成分値はUSDAより。どちらもバーガー1個分の113gあたり。

表にある通り、代替肉の方がわずかにカロリーが低い程度で、脂質と糖質に関しては本物のお肉よりも代替肉の方が若干多く含まれています。

また、ビヨンドミートのタンパク質は20gで、どの栄養素も本物の牛肉と同等の栄養価となっています。

結論、代替肉は食べない方が良いの?

代替肉を食べた方が良いのか、食べない方が良いのか、結局のところどうなのが、まとめてみると以下のようになります。

代替肉の健康メリット

本物のお肉の代わりに疑似肉を食べるメリットとしては、以下が考えられます。

  1. 本物のお肉による健康デメリットを回避できる
  2. タンパク質など、本物と同等の栄養が摂取できる
  3. 食べたときの満足感は、本物と同等に得られる

代替肉の健康デメリット

逆に、代替肉のデメリットとしては以下が挙げられます。

  1. 加工度が高く、野菜や豆をそのまま食べるようなメリットは無い
  2. カロリーや糖質を考えるとダイエット効果は見込めない
  3. 食べ過ぎは添加物の摂取に繋がる

筆者個人としては、メリットの方がデメリットより遥かに大きいと考えて代替肉を喜んで食べる派ですが、食べ物に関する考え方は人それぞれ。

「添加物には反対」という方は食べることができない代替肉ですが、こうしたメリット・デメリットを自分自身で比較し、身体も心も喜ぶ食事を選択していただければと思います。

環境や動物福祉における代替肉のメリット

大自然の中で嬉しそうに走る家畜

一般消費者として、健康面への影響が最も気になるところではありますが、代替肉が海外でこれほどまでに支持される背景には、環境や動物福祉の面でのメリットもあります。

まず環境的な側面ですが、世界の温室効果ガスの15%程度が畜産から排出されていて、(論文)、環境負担が低い植物性食品へのシフトは、国連も推奨するなど世界で重要視されています。

ビヨンドミートは、本物の牛肉の代わりに代替肉を食べることで、排出される温室効果ガスを90%削減できるとしています。

動物愛護的にもメリット豊富な代替肉

また、国連のデータを元に計算してみると、年間で約600億もの家畜が屠殺されていることになります(国連データ)。一秒あたりに1,900もの牛や豚、鶏などが、私たちのお腹を満たすために若くして殺されています。

当然のことながら、自然界では毎日のように食物連鎖が起きていますし、この数字をどう捉えるかは個人の価値観次第です。

ただ、代替肉を食べることによってこの数字を1でも減らせるのであれば、生き物の命を大切に思う人にとっては嬉しいことです。

先進国を中心に、動物に対する慈悲の心や動物愛護的価値観が強まりを見せていて、こうした社会通念の変化も代替肉の流行を後押しする要因の一つでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

日本でも話題のビヨンドミートだけでなく、欧米やイスラエルなどを中心に、世界中では数多くの代替食品企業がひしめき合うプラントベース市場。

牛肉やチキンなどのお肉類から火がついたプラントベースフードですが、現在は魚介類や乳製品、卵までもが植物性に置き換わりつつあります。

また、今起きている代替肉トレンドはタピオカの大流行などとは性質が全く異なり、背景に健康問題と環境問題という大きな課題があるのも特徴的です。

美味しいもの、好きなものを食べるということは、私たち人間にとって何にも変え難い喜びで、何を食べるかは、誰にも指図されるべきものでは無いと思います。

いつまでも、美味しいものを食べ続けるために。植物性の代替肉は、そんな未来を実現するために、なくてはならない食品なのかもしれません。