ビーガンやベジタリアンはグルテンフリー?菜食との違いと意外な効果

グルテンフリーのパン

今、女性の間で話題となっている、グルテンフリーダイエット(Glute-free Diet: GFD)。

小麦などに含まれるタンパク質、グルテン(Gluten)を排除する食生活で、海外の著名人が実践していると話題にもなっています。

“特定の原材料を食事から排除する”という点で、ベジタリアンやビーガンなどの菜食と一緒に語られることもあるグルテンフリーですが、これらの本質は似ても似つきません。

今回は、今流行りのグルテンフリーダイエットとビーガンなどの菜食との違いを、詳しく解説します。

グルテンフリーと菜食の違い

健康的な朝食とグルテンフリーのパン

まず初めに、グルテンフリーダイエットの基本情報と、ビーガンやベジタリアンとの違いをみてみましょう。

グルテンフリーと菜食の違いを簡単に説明すると、グルテンフリーダイエットはアレルギーや過敏症対策のみを目的とし、ベジタリアンやビーガンは健康向上や環境保全、動物愛護が目的となる食の選択です。

アレルギー対策のグルテンフリー

グルテンフリーダイエットとは、小麦などの穀物に含まれるグルテン(Gluten)と呼ばれるタンパク質の摂取を控え、グルテンへのアレルギーや過敏症などの異常な免疫反応を抑える食生活です。

ちなみに、グルテンフリーダイエットのダイエット(Diet)は、単に”食生活”を意味する英語で、”ダイエット”という言葉から日本人が思い浮かべる”減量”などの意味はありません。

グルテンフリーで食べれないもの

小麦(グルテン)を含有する原材料を使用した食べ物は結構多く、パンやパスタ、ピザ(生地)などの洋食はもちろん、うどんやラーメンなど、和食の麺類にも含まれています。

また、揚げ物の衣にも一般的には小麦粉が使われるので天ぷらなどもグルテン含有食で、麦から作られるビールにもグルテンが含まれています。

麦を原材料に含むこれら全ての食品を摂取しないのが、グルテンフリーの食生活です。

菜食では制限されないグルテン

ビーガンも食べられるベーグル

グルテンフリーダイエットは、あくまでグルテンに対する”免疫疾患の治療法”としてのダイエット(食生活)であるため、肉や乳製品など、その他の食材に関する制限は一切ありません。

一方、肉や魚などを口にしない菜食(ベジタリアン・ビーガン)は、植物性のもは基本的に全てOKで、グルテンの摂取に関する制限はありません。

カテゴリー 牛乳 鶏卵
グルテンフリー ×
ベジタリアン × ×
ビーガン × × × ×

これらに加えて、ビーガンは蜂蜜NGですが、蜂蜜にグルテンは入っていないので、グルテンフリーダイエットではOKな食材です。

パンを食べないグルテンフリー&ビーガン

このようにグルテンフリーダイエットと菜食は、実践する目的も制限する食べ物も異なるのですが、唯一の共通点としては、グルテンフリーもビーガンもパン類を口にしないことが挙げられます。

パンを食べないのは菜食の中でもビーガンだけですが、ビーガンとグルテンフリーがなぜパンの摂取を避けるかというと、以下の理由によるものです。

  • グルテンフリー:小麦粉(グルテン)が入っているため
  • ビーガン:乳成分が入っているため

ビーガンはベーグルが食べられる

ほとんどのパンには小麦粉が含まれているので、米粉などからつくられているものを除き、グルテンフリーダイエットでは食べることができません。

一方、基本的に乳成分が含まれているパン類ですが、ベーグルとフランスパンには乳成分が入っておらず、ビーガンはこの2種類は食べることができます。

ちなみに、ベジタリアンは乳成分OKなので、お肉やお魚さえ具材に入ってなければどんなパンでも食べることができます。

グルテンフリーダイエットの効果

ダイエット中のスープ

ハリウッド女優のミランダ・カーさんや、プロテニス選手のジョコビッチさんなどが実践していると話題のグルテンフリーダイエットですが、実際のところ、どのような効果が期待できるのでしょうか。

美容や減量などに効果があるとも噂されるグルテンフリーですが、実は、現在医学的に認められている効果は、アレルギーなど、グルテン関連障害による異常な免疫反応を抑制することのみです。

食事療法であるグルテンフリーダイエット

グルテンに対するアレルギーや過敏症を持っている人が実践すれば、もちろん「お腹の調子がよくなった」「疲れにくくなった」「肌質が改善された」等々、様々なメリットをもたらしてくれます。

しかしながら、そのような疾患を持っていない人に対する健康効果は医学的には認められておらず、誰にでも効果のあるものではありません。

グルテン過敏症だったジョコビッチ

グルテンフリーダイエットの実践者として有名なジョコビッチ選手は、もともとグルテンへの耐性がない体質でした。

また、グルテンだけがフォーカスされがちですが、彼は乳糖(ラクトース)にも耐性がなく、食生活からこのふたつを同時に排除したことでアレルギー症状が消え、体調改善やパフォーマンス向上などに繋がりました。

グルテンアレルギーは人口の10%未満

研究によって数値に差異はありますが、ジョコビッチ選手のようにグルテンに対する過敏症やアレルギーを持った人は、全体の10%未満と言われています。

また、グルテンが引き起こす病気にセリアック病(Celiac Disease)と呼ばれる免疫疾患がありますが、罹患率は1%前後です。

グルテン排除の効果は限定的

グルテンに対する過敏症やアレルギー、もしくはセリアック病を持っていた場合、グルテン摂取を控えることで体調が改善されるということは大いに考えられます。

しかしながら、統計からもわかるように、そうした症状を持った人はあまり多くなく、グルテン排除による直接的な恩恵を受けられるケースは限定的と言えます。

低乳糖ダイエットでもあるグルテンフリー

少量の牛乳
グルテンフリーダイエットのルールに基づいた食生活を実施することで、グルテンアレルギーや過敏症でない場合でも、体調改善がもたらされる可能性はあります。

それには、グルテンを含んだ食事を避けることによって、同時に「乳成分の摂取が抑えられる」ということが関連しています。

人口の9割が乳糖不耐症

上述したように、グルテンに対するアレルギーや過敏症を持った人それほど多くはありません。

その一方で、日本では約90%の人が、牛乳などに含まれる乳糖(ラクトース)を正常に消化できない乳糖不耐症(Lactose Intolerance)を持っています。

乳糖もたくさん含むグルテン食品

グルテンフリーダイエット(GFD)を実施すると、パンやピザ、ホットケーキやクッキー、シリアルなども排除の対象になりますが、どれも必ずと言っていいほど乳成分が含まれています。

GFDが本来意図するところではありませんが、こうしたグルテン含有食品を口にしないことで乳糖の摂取を抑えることに繋がり、乳糖不耐症の症状が緩和されて体調が改善される可能性があります。

実際に、グルテンフリーを実施していた人が後々お医者さんに見てもらったところ、実はグルテンアレルギーは持っておらず、乳糖不耐症だったという事例もあります。

乳糖不耐症の症状改善による健康効果

乳糖不耐症の症状は主に、腹痛やお腹の張り、下痢、吐き気、頭痛、疲労感、肌荒れなどで、これらはグルテン関連障害の症状と似ている点が多いです。

グルテンフリーダイエットの実践者から、こうした症状と逆の健康効果(「お腹の調子が良くなった」「疲れにくくなった」「肌質が改善された」etc.)の報告がありますが、これらの効果は不耐症である乳糖(ラクトース)を口にしないことに起因している可能性も大いに考えられます。

低ラクトースなグルテンフリー

多くの人がグルテンフリーとして実践している食生活は、低ラクトース(乳糖)ダイエットでもあります。

グルテン関連障害は珍しい一方で乳糖不耐症は非常に多いため、グルテンフリーダイエットで健康効果を実感している人の中には、実はグルテンではなく、乳糖の摂取を控えたことによる恩恵を受けているケースも少なくないでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

グルテンフリーダイエットの目的は、あくまでアレルギーなどの過敏症対策。

ビーガンやベジタリアンなどとは目的も大きく異なり、食べるもの・食べないものも随分と違い、菜食ではグルテンに対して神経質になる必要はありません。

また、グルテンフリーでなくても、日本人の約9割が耐性を持たないラクトース(乳糖)を減らしてみるだけでも、健康効果を実感できる可能性もあります。

グルテンフリーという言葉だけが一人歩きしている昨今ですが、グルテンフリーダイエットを始めようと考えている方は、乳成分に含まれるラクトースにも、一度目を向けてみてもいいかもしれません。

この流行が”ラクトースフリーダイエット”へと移り変わる日もそう遠くはないのではないでしょか。