ヴィーガンとベジタリアンの違いは?12種類ある菜食主義の定義やメリットを徹底比較

ビーガンとベジタリアンの違いは卵と牛乳にある?

「野菜しか食べない」ベジタリアンやヴィーガンなどの菜食主義。

ひとくくりにされがちな菜食主義者ですが、実はその種類は多岐に渡り、10種以上にカテゴライズすることができます。

「食べるモノ・食べないモノ」の線引きだけでなく、「なぜ肉を食べないのか」の動機も千差万別な菜食主義者たち。

今回は、ヴィーガンとベジタリアンの違いや各種菜食主義の定義、それぞれのメリット&デメリットなど、一挙にご紹介します。

10種以上に分類される菜食主義

ビーガンとベジタリアンの違いと共通点は?
皆さんのイメージ通り、どんな菜食主義でも「植物性中心のライフスタイル」というのが基本的な共通点です。

一方で、それぞれの細かな違いに着目すると、以下のようなカテゴリーに分けることも可能です。

  1. ヴィーガン
  2. ロー・ヴィーガン
  3. ベジタリアン
  4. ラクト・オヴォ・ベジタリアン
  5. ラクト・ベジタリアン
  6. オヴォ・ベジタリアン
  7. ポゥヨゥ・ベジタリアン
  8. ペスカタリアン/ペスコ・ベジタリアン
  9. フレキシタリアン
  10. オリエンタル・ベジタリアン
  11. フルータリアン
  12. マクロビアン

まるっと一括りに「菜食主義」と総称できるこれらの食生活ですが、こんなにたくさんの種類があるとは驚きですよね。

全12種類の菜食主義の違い

ビーガンとヴェジタリアン以外に魚を食べる菜食主義も?

上記したリストの中にはとてもマイナーな種類も含まれていて、正直なところ「ヴィーガンとベジタリアンの違い」さえ把握していれば基本的には問題ないでしょう。

ここではさらっと簡単に、12種の菜食主義の特徴についておさらいしておきます。

1. ヴィーガン:Vegan

まずひとつ目が、ヴィーガン(またはビーガン)です。

ヴィーガンの食生活における特徴は、「お肉、お魚、乳製品、卵、はちみつを口にしない」ことです。

また、ヴィーガンは食事以外にも使える単語で、例えば「革製品を買わない」というライフスタイルも、ヴィーガンという言葉で表すことができます。

食べれないものが多い(お肉だけでなく、卵やはちみつなども食べない)ことに加え、他の菜食主義とは違い、食以外にも使えるのが特徴です。

2. ロー・ヴィーガン:Raw Vegan

ふたつ目は、ヴィーガンに「生(ナマ)」という意味の英語、ロー(Raw)がくっついた、ロー・ヴィーガン(Raw Vegan)です。

ロー・ヴィーガンはその名の通り、「ナマの物しか食べないヴィーガン」で、加熱したとしても40℃〜48℃以下の温度で調理しなくてはいけません。

「なんでも生の状態の方が栄養豊富」との思想に基づき実践され、菜食主義の中でもマイナーな部類に入ります。

フルーツや野菜、ナッツやシードなどが中心の食生活で、生で食べれない豆や穀物は発芽させてから食したりします。

3. ベジタリアン:Vegetarian

次のベジタリアン(Vegetarian)は、長い歴史を持つ、最も一般的な菜食主義です。

ベジタリアンは「お肉、お魚を口にしない食生活」で、それ以外に関しては基本的には制限がありません。

ベジタリアンとヴィーガンの違いを表にしてみると、以下のようになります。

カテゴリー 蜂蜜
ヴィーガン × × × × ×
ベジタリアン × ×

ベジタリアンはお肉とお魚は食べないけれど、「卵、乳製品、はちみつは食べて良い」というのがヴィーガンとの違いです。

4. ラクト・オヴォ・ベジタリアン:Lacto-Ovo Vegetarian

上のベジタリアンという単語に、

  • 乳製品を意味するラクト(Lacto)
  • 卵を意味するオヴォ(Ovo)

の二語を付け足した、ラクト・オヴォ・ベジタリアンという分類も存在します。

最近はほぼ聞かなくなった言葉ですが、「乳製品(ラクト)も卵(オヴォ)も食べるベジタリアンです」と表現するために使われていました。

近年、特に欧米では、「ベジタリアン」単体で「乳製品と卵を食べる」と解釈されるため、ラクト・オヴォ・ベジタリアンは死語になりつつあります。

※ わざわざ「ラクト・オヴォ」を付けなくても同じ意味で解釈されるため、「ベジタリアン」と言うだけで事足ります。

5. ラクト・ベジタリアン:Lacto Vegetarian

乳製品という意味のラクト(Lacto)だけを付けたラクト・ベジタリアンは、「乳製品(ラクト)はOKなベジタリアンです」と伝えるための言葉です。

普通のベジタリアンと違い、ラクト・ベジタリアンは「乳製品はOK」な一方で、「卵はNG」なベジタリアンになります。

ベジタリアンだけど、卵アレルギー等なんらかの理由で「卵を食べられない」場合、「ラクト」と付け加えることで「乳製品だけOK」が表現できます。

6. オヴォ・ベジタリアン:Ovo Vegetarian

卵を意味するオヴォ(Ovo)だけをベジタリアンに付け足して、オヴォ・ベジタリアンとすると、「(オヴォ)はOKなベジタリアンです」と伝えることができます。

「卵はOK」である一方で、オヴォ・ベジタリアンは逆に「乳製品がNG」です。

ややこしくなってきましたので、上記の違いを簡単に表にしてみます。

カテゴリー
ベジタリアン × ×
ラクト・ベジタリアン × × ×
オヴォ・ベジタリアン × × ×

※ 本記事では「ラクト・オヴォ・ベジタリアン」は「ベジタリアン」とイコールとします。

シンプルに「ベジタリアン」と言えば「乳製品も卵も両方◯」、わざわざラクトと付けたら「乳製品だけ◯」、オヴォと付いたら「卵だけ◯」ということになります。

7. ポゥヨゥ・ベジタリアン:Pollo-Vegetarian

スペイン語で鶏肉を意味するポゥヨゥ(Pollo)が付いた、ポゥヨゥ・ベジタリアンという分類もあります。

とてもマイナーな部類に入るベジタリアンですが、「白肉」と呼ばれる鶏肉などは食べ、「赤肉」と呼ばれる牛肉などは食べない食生活になります。

「いや、肉食べとるやん」ということで、ベジタリアンと呼ぶべきではないとの意見もありますが、宗教的背景や、「赤肉は体に悪い」という健康面の懸念から赤肉だけを避ける食生活です。

8. ペスカタリアン:Pescatarian

ペスカタリアン(Pescatarian)、またはペスコ・ベジタリアン(Pesco Vegetarian)と呼ばれる菜食主義もあります。

イタリア語で魚を意味するペスク(Pesce)をベジタリアンに付け足した単語で、こちらは「お肉は食べないけど魚は食べる」というタイプになります。

「魚は植物ちゃうやん」ということで、こちらに対しても様々な意見がありますが、他の菜食主義と比べて実践ハードルが低く、世界各国でペスカタリアン人口が増加傾向にあります。

ペスカタリアンはお肉を食べない食生活であることから、ノンミートイーター(Non-meat Eater)と呼ぶこともあります。

※ 魚を食べるペスカタリアンですが、学術論文等ではベジタリアンの一種として扱われています。

9. フレキシタリアン:Flexitarian

ベジタリアンに、英語で「柔軟な」という意味のフレキシブル(Flexible)を組み合わせたフレキシタリアン(Flexitarian)も、菜食主義のひとつです。

フレキシタリアンの基本的なスタンスは、「基本はベジタリアンだが、お肉やお魚もたまに食べる」というもので、ゆるめのベジタイリアンに位置付けられます。

欧米などでは非常にポピュラーな食生活で、イギリスでは人口の30%以上がフレキシタリアンだとする調査結果も出ています(参考)。

フレキシタリアンという呼び名以外にも、セミ・ベジタリアン(Semi Vegetarian)という単語が使われることもあります。

10. オリエンタル・ベジタリアン:Oriental Vegetarian

東洋を意味するオリエンタル(Oriental)という単語が付いたベジタリアンもあります。

オリエンタル・ベジタリアンでは、ネギ・にんにく・にら・らっきょう・アサツキなど、五葷(ごくん)と呼ばれる食材を避けるのが特徴で、仏教の精進料理や台湾素食などがこれに該当します。

欧米ではほとんど聞くことがないマイナーな言葉ですが、アジアの菜食主義者が、西洋発祥のベジタリアンと自身の菜食主義を差別化したい時などに使うことがあります。

11. フルータリアン:Frutarian

こちらも非常にマイナーな菜食主義ですが、フルーツ(Fruit)という単語を組み合わせたフルータリアン(Frutarian)という菜食主義もあります。

基本的にはヴィーガンと同じで「お肉、お魚、乳製品、卵、はちみつ」など一切の動物性食品を口にしない食生活ですが、フルータリアンの特徴は「植物も生き物とみなす」点にあります。

食べるためには「収穫しても木が生き続ける」ことが条件で、例えば、木になるリンゴの実は食べてOK(リンゴの実を食べてもリンゴの木は生き続けるため)ですが、お米はNG(稲ごと収穫するため)となります。

※ フルータリアンは栄養失調のリスクも特に高く、注意が必要な食生活です。

12. マクロビアン:Macrobian

マクロビオティック(Macrobiotics)という思想に基づく食生活を送る人々は、マクロビアン(Macrobian )と呼ばれます。

マクロビオティック(マクロビ)は、お肉やお魚、乳製品など動物性の食品を避ける食生活ですが、1900年代初旬に生まれた陰陽(いんよう)思想がベースとなります。

玄米菜食などとも呼ばれ健康的なイメージがありますが、マクロビにおける「何が身体に良いか」は科学的根拠の乏しい思想・哲学によって判断されるため、栄養学的な欠陥も見受けられる食生活です。

その他の菜食主義

上記の12種以外にも、菜食主義の中には液体しか口にしないリキッダリアン(Liquidarian)や、空気しか食べない(何も食べない)ブレサリアン(Breatharian)なども存在します。

さすがにちょっとハードコアすぎるので、本記事での解説は省きます。

また、ハラールやコーシャーなども色々な制約がある食生活ですが、菜食主義とは別物ですので本記事では割愛します。

ヴィーガンとベジタリアンの違い

ビーガンとヴェジタリアンの食事における制限の違い実は12種類以上ものカテゴリーに分類できる菜食主義。

その中でも、現代において最も実践人口が多く、二大菜食主義とも言えるのがヴィーガンとベジタリアンです。

菜食主義の代表格とも言えるベジタリアンと、「完全菜食主義」や「菜食主義」などとも訳されるヴィーガンの2種類に焦点を当てて、もう少し掘り下げてみます。

ヴィーガンは乳製品も卵も食べない

上でも簡単に触れたヴィーガンとベジタリアンの違いについて、まずは改めて一覧で確認してみます。

カテゴリー 蜂蜜
ベジタリアン × ×
ヴィーガン × × × × ×

ヴィーガンとベジタリアンの違いで最も顕著なのが、ヴィーガンの方が食べれないものが多いという点です。

  • お肉とお魚だけ食べないベジタリアン
  • お肉とお魚だけじゃなく、乳製品も卵もはちみつも食べないヴィーガン

では、ベジタリアンとヴィーガンでは、具体的に食生活がどんなふうに異なるのか、簡単にチェックしておきましょう。

「ヴィーガンは乳製品を口にしない」ということは…

まず、ヴィーガンは乳製品を口にしないため、例えば下記のような食材を食べることができなくなります。

  • 牛乳
  • バター
  • チーズ
  • ヨーグルト
  • アイスクリーム
  • パン
  • チョコレート
  • ケーキ
  • ホエイプロテイン
  • 乳酸菌飲料

※ 豆乳アイスや、カカオ100%のチョコ、乳不使用のフランスパンやベーグルなど、上記の中にも乳成分を含まないモノもありますので、一概には言えません。

上記の食品は基本的に、「ベジタリアンなら食べられるけど、ヴィーガンだと食べられない」ということになります。

「ヴィーガンは卵を口にしない」ということは…

ベジタリアンと違い、ヴィーガンは卵も口にしないため、例えば下記のような食材も食べられません。

  • 卵料理(ゆで卵、目玉焼きなど)
  • マヨネーズ
  • 天ぷら粉
  • 中華麺
  • プリンなどの洋菓子

※ 天ぷら粉や中華麺など、食品の物性(食感など)向上のために卵が含まれる加工食品は多岐に渡ります。もちろん商品やメーカーによって異なるため、一概には言えません。

上記のような原料に卵を含む食品も、「ベジタリアンならOKだけどヴィーガンだとNG」となってしまいます。

ヴィーガンは蜂蜜を口にしない

最後にはちみつですが、こちらに関してはヴィーガンの中でも「食べる/食べない」の判断が分かれる食材です。

基本的には「ヴィーガンは蜂蜜もNG」という認識が主流ではありますが、人それぞれ様々な動機で実践しているため、中には「はちみつは気にしない」というヴィーガンもいます。

個人差があるものの、もしヴィーガン向けに食事を提供する等の機会があれば、はちみつも使わないように気にしてみると良いでしょう。

ヴィーガンとベジタリアンの共通点

ベジタリアンとヴィーガンの共通点乳製品と卵を避けるヴィーガンは、ベジタリアンよりも更に食事が制限される(食べられないものが多い)ことが見てとれたかと思います。

一方で、ヴィーガンとベジタリアンは共通点も非常に多い食生活です。

ここでは、このふたつに共通点に着目して、「食べれるもの/食べれないもの」などを詳しくみていきます。

ヴィーガンもベジタリアンも「お肉を食べない」

まず、ヴィーガンもベジタリアンも共通して、お肉を口にしません

この「お肉」には、牛肉や豚肉、鶏肉などの一般的なモノはもちろん、羊肉、ラム肉、鹿肉などのジビエ、七面鳥(ターキー)やクジラ肉なども含まれます。

また、肉類から抽出したエキス(出汁)や油なども同じ扱いで、鶏ガラや豚骨などのスープ、ラードや牛脂で味付けした料理、ゼラチンを含むゼリーなども避けるのが一般的です。

※ エキスや油、ゼラチンなどについては、「食べる/食べない」の線引きに個人差があります。

ヴィーガンもベジタリアンも「お魚を食べない」

お肉の他に、ヴィーガンもベジアリアンも魚介類を食べません

サーモンやマグロなどの一般的なお魚はもちろんのこと、エビやカニなどの甲殻類、牡蠣やホタテなどの貝類も、共通して食べない食材に含まれます。

さらに、カツオなどの魚介出汁を含む日本食料理や、牡蠣エキスが入ったオイスターソースで味付けされた料理なども避けるのが一般的です。

また、魚が原料のちくわやカマボコなどの練り物も、ヴィーガンでもベジタリアンでも食べません。

※ カツオ出汁などの魚介エキスについては、「食べる/食べない」の線引きに個人差があります。

ベジタリアンもヴィーガンも魚卵を食べない

ビーガンもベジタリアンも食べない魚卵イクラやウニなどの魚卵についても、ヴィーガンもベジタリアンも共通して魚卵は食べないケースが多いです。

「あれ、ベジタリアンは卵OKでは?」と感じるかと思いますが、ベジタリアンには下記のような考えから「鶏卵(ニワトリの卵)はOKだけど、魚卵はNG」とするタイプが一定数います。

  • 鶏卵を食べても、産んだニワトリは生きているからOK
  • 鶏卵は無精卵だから、ヒヨコの命を奪うことにならないのでOK
  • 魚卵を食べるには、魚のお腹を割かないといけないからNG

価値観次第なので一概には言えませんが、ベジタリアンに食事を提供する際には、「魚卵は大丈夫かどうか」についても確認しておくと安心かもしれません。

その他あり得る「口にしない食材」共通点

上記以外にも、個人差が大きいですが、ヴィーガンかベジタリアンかを問わず、以下のような食材を避ける人もいます。

  • 白砂糖:脱色に牛骨粉(骨炭)を使用するため(参考
  • 日本酒・ワイン:清澄剤としてゼラチンや卵白を使用するため(参考
  • 共通の調理器具で調理された料理

白砂糖やワインなど意外なところにも、加工段階で動物性の原料が使われていることがあります。

また、動物性の食材と同じ調理器具を使った料理を嫌う人もいて、例えば、トンカツを揚げた油で料理された野菜の天ぷらや、お肉と同じフライパンで焼いた野菜などです。

ヴィーガン、ベジタリアンの中でも、何をどこまで気にするかは本当に人それぞれですので、あくまで参考程度にしていただければと思います。

※ 菜食主義者に料理を提供する際などには、調理前に「お肉と同じ調理器具ですが」などと、一言伝えておくと安心かもしれません。

ヴィーガンとベジタリアンの食以外での違い

ヴィーガンとベジタリアンの食以外での違いここまでは、食べ物に焦点を当ててベジタリアンとヴィーガンを比較しましたが、食以外での違いも見てみましょう。

ベジタリアンもヴィーガンも、どちらも食生活に関する単語なのですが、ヴィーガンだけは食生活以外でも使うことが可能です。

言い換えると、「ベジタリアン」は食生活だけを表す言葉である一方、「ヴィーガン」は食生活を含むライフスタイル全体を表現できる言葉になります。

衣(ファッション)におけるヴィーガン

ビーガンレザーやビーガンコスメなど食事以外のビーガニズムヴィーガンの基本的な考えは「動物性のモノを避ける」ですが、この概念をファッションに当てはめることもできます。

服飾においては、革製品に牛、ウールに羊、ダウンに鳥、毛皮製品にキツネなど、本来は様々な動物が使用されていますが、こうした動物性の製品を買わないライフスタイルも、ヴィーガンと呼ぶことができます。

例えば、本物の革に似せたフェイクレザーはヴィーガンレザーなどと呼ばれ、動物性不使用なモノしか作らない、ヴィーガンファッションブランドなども存在します。

一方で、ベジタリアンは食生活だけに関する概念ですので、ベジタリアンファッションなどという言葉が使われることはありません。

住(日用品)におけるヴィーガン

シャンプーなどの日用品もヴィーガン
ヴィーガンは、化粧品やシャンプーなどの日用品に関しても使うことができます。

「動物性素材を原材料に使用しない」ことに加え、製品の開発段階で「動物実験をしていない」プロダクトも、ヴィーガン対応と呼ぶことができます。

例えば、ラッシュ(LUSH)というメーカーのスキンケア・ヘアケア商品は、動物性原料を使わないだけでなく、動物実験も一切行わないことで知られています。

こうした商品はヴィーガン向けスキンケア商品などと表現することができ、他にも、同様の条件を満たした化粧品であればヴィーガンコスメなどと呼ぶことができます。

※ 「動物実験反対」を強く主張する人も一定数いますが、医学や薬学なども含めると、現代社会を生きる上で動物実験を避けること(動物実験による恩恵を受けずに生きること)は現実的には不可能です。あくまで可能な範囲で、「動物実験を経ていない選択肢があれば、そちらを選ぶ」というのが多くのヴィーガンのスタンスです。

食はベジタリアンで、衣・住はヴィーガンなケースも

上記のように、ヴィーガンの概念は衣食住すべてにおいて使うことができる一方で、ベジタリアンは食だけに適用可能です。

こうしたことから、菜食主義者の中には「食についてはベジタリアンだけど、衣・住についてはヴィーガン」というケースもあります。

例えば、「乳製品も卵も食べるけど(ベジタリアン)、革製品は買わない(ヴィーガン)」などのパターンです。

「こうでなくてはいけない」というのはありませんので、ご自身の価値観やライフスタイルに合わせて、柔軟に言葉を使い分けてみても良いかもしれません。

ヴィーガンとベジタリアン、どっちが良いの?

ビーガンとヴェジタリアン、結局どっちの方が優秀?ヴィーガンとベジタリアンの違いはなんとなく掴めてきたと思いますが、「果たしてどちらの方が良いのか」も気になるところですよね。

そこでここからは、下記の4つの観点から、ベジタリアンとヴィーガンではどっちが優れているのか、比較してみます。

  1. 健康面でのメリット
  2. 環境面でのメリット
  3. 動物福祉的なメリット
  4. 実践のしやすさ

健康メリット比較

ビーガンとヴェジタリアン、健康効果ではどちらの勝利?菜食主義は種類を問わず、正しく実践すれば「健康状態の改善につながる」と考えられています。

実際に菜食主義を対象とした論文でも、肥満や糖尿病、ガンや心疾患、さらにはアルツハイマーなど、様々な疾患のリスク低減につながる可能性が示唆されていたりします(論文1, 論文2, 論文3, 論文4, 論文5, 論文6, 論文7, 論文8)。

ベジタリアンとヴィーガンの健康効果については、別記事で詳細に解説していますので、興味のある方はご覧ください。

ヴィーガンの方が健康効果大?

ベジタリアンもヴィーガンも、どちらも健康へ寄与する可能性を秘めていると言えますが、ヴィーガンの方がより健康メリットがより高いと示唆する論文もあります。

例えば、ベジタリアンよりもヴィーガンの方がより肥満になりにくいとした研究です(論文9, 論文10, 論文11)。

また、糖尿病や心疾患、癌などのリスクもベジタリアンよりもヴィーガンの方が低い傾向にあることも、いくつかの研究が示唆しています(論文1, 論文9, 論文12, 論文13)。

論文もあくまで参考程度にしかなりませんが、ヴィーガンの方がベジタリアンよりも高いポテンシャルを持っていると言えるかもしれません。

菜食主義に共通する健康ポテンシャル

「論文もあくまで可能性を示すに過ぎない」という前提ですが、上記したようなベジタリアンやヴィーガンの健康ポテンシャルに関連する論文のリンク集を下記にご紹介します。

全て英語になってしまい恐縮ですが、エビデンスが必要な方はご活用いただければと思います。

環境メリット比較

地球温暖化対策にもなるビーガンやヴェジタリアン健康に加えて、ベジタリアンやヴィーガンなどの菜食主義が地球温暖化などの環境問題解決につながるというのも、メリットに挙げることができます。

私たち人間は、自然の摂理に反して大量の温室効果ガスを放出しており、そのガスが地球の温度を上昇させ、結果的に豪雨などの異常気象にも繋がっています(論文35, 論文36, 論文37, 論文38, 論文39, 論文40, 論文41, 論文42)。

そんな温室効果ガスですが、菜食主義を実践することで排出量が減らせると考えられています(論文43, 論文44, 論文45, 論文46, 論文47)。

お肉を食べないだけで環境に良い?

国連の計算では、温室効果ガスの実に24%が食べ物由来となっていますが、食物の中で一番多くの温室効果ガスを出しているのがお肉になります(論文43, 論文44, 論文45, 論文46, 論文47)。

ベジタリアンもヴィーガンも、最も環境に悪いお肉を食べない食生活であることから、環境へのメリットが期待されています。

例えばオックスフォード大学の研究では、お肉と牛乳を口にしないだけで温室効果ガス排出量を49%削減できるとの試算が出ていたりもします(論文42)。

ヴィーガンの方が2倍環境に優しい?

ベジタリアンもヴィーガンも、通常の食生活より環境に良いことは疑いようがありませんが、ヴィーガンの方がより環境に優しいということ示す研究もあります(論文45, 論文48, 論文49)。

こうした論文では具体的に、ヴィーガンによる温室効果ガスの削減効果は最大70%とされる一方で、ベジタリアンの削減効果は30%程度とも記載されています(論文48, 論文49)。

ベジタリアンは乳製品が大きく影響

お肉に次いで環境に悪い食材には乳製品が挙げられ、乳製品を食べるベジタリアンと食べないヴィーガンでは環境への影響に大きく差があるようです(論文50)。

ベジタリアンにおいては、チーズやヨーグルトなど、乳製品の摂取量を著しく増やすと「雑食*よりも環境に悪くなる」とした研究も見受けられることから、環境面ではヴィーガンの圧勝と言っても良いかもしれません(論文45)。

※ この研究における雑食は、動物性食品の摂取を1/3程度に減らしたフレキシタリアンを指しています。

動物福祉メリット比較

ビーガンやヴェジタリアン実践理由の一つの動物福祉次に、ベジタリアンとヴィーガンを、動物愛護的視点からも比較してみます。

まず、国連によると、世界では一年間に、約620億羽の鶏(ニワトリ)と、約15億頭の豚、約3億頭の牛が、人間の食料を目的として屠殺されているようです。

合計すると約638億となり、約75億人の世界の人口の約9倍の数にもなります。

ベジタリアンもヴィーガンも共通してお肉を口にしない食生活ですので、この数字の低減に寄与できる可能性は大いに考えられるでしょう。

ヴィーガンの方が動物に優しい

日本だけに限定してみると、現時点で約2億8,000万羽の鶏、約915万頭の豚、約383万頭の牛が飼育されているようです(農林水産省)。

上記の鶏のうち、約半数の1億4,000万羽が採卵用に飼育されているようで、牛も約3割に当たる130万頭が乳牛となっています(農林水産省)。

こうした数字からも、乳製品と卵を食べるベジタリアンは、例えお肉を食べなくても多くの動物を必要とする食生活であることが見て取れます。

どちらが正しいなどと議論するつもりは全くありませんが、客観的な数字から見れば、ヴィーガンの方がより動物の犠牲が少なく、動物愛護的にもより好ましい食生活と言えるでしょう。

実践しやすさ比較

ベジタリアンとヴィーガンはどっちがやり易い?最後に、「実践のしやすさ」についても、ベジタリアンとヴィーガンを比較してみます。

どちらも「お肉とお魚を食べない」というのが基本となりますが、本記事の前半で触れたように、ベジタリアンよりもヴィーガンの方が「食べることができない食材」の数が圧倒的に多い食生活です。

厳格なヴィーガンの生活では、外食の際に食べられるメニューが見つからなかったり、コンビニて売っている加工食品がほとんど食べられなくなってしまったりと、日常生活での支障も出やすくなります。

ヴィーガンの方が栄養不足に陥りやすい

生活上の苦労だけでなく、ベジタリアンよりもヴィーガンの方が、健康に欠かせない栄養素が不足しやすい傾向にあります。

具体的には、ビタミンB12やビタミンD、タンパク質やカルシウム、オメガ3脂肪酸などの栄養素が、特にヴィーガン不足しやすいことが論文でも示されています(論文51, 論文52, 論文53, 論文54

ベジタリアンやヴィーガンでは、どんな栄養素が不足しがちが、そして、どうやってそれらの栄養を補えば良いかなどの詳細は別記事をご覧ください。

どちらの菜食主義も、正しく気を配りながら実践すれば十分な栄養を摂取することが可能(論文51, 論文52, 論文54, 論文55)と考えられていますが、日常生活への影響と、栄養摂取の難易度を考えると、ベジタリアンの方がより実践しやすい菜食主義だと言えるでしょう

ベジタリアンとヴィーガン比較の総合評価

ここまで健康、環境、動物福祉、やりやすさの4つの観点で、ベジタリアンとヴィーガンを比較してきましたが、最終評価を一覧にしてみます。

評価対象 ベジタリアン ヴィーガン
健康 ★★★★☆ ★★★★☆
環境 ★★★☆☆ ★★★★★
動物愛護 ★★★☆☆ ★★★★★
実践しやすさ ★★★☆☆ ★☆☆☆☆

環境動物福祉に関してはヴィーガンの方が高い評価となりましたが、実践のしやすさではベジタリアンの方が勝る結果に。

また、健康面はヴィーガンの方が高いポテンシャルを秘めているものの、栄養失調のリスクも高いことから、ベジタリアンと同じ評価としました。

ベジタリアンもヴィーガンも一長一短

どちらも一長一短なベジタリアンとヴィーガンですが、結局のところ「どちらが正しい」とか「どちらの方が優秀」なんてことはないと、筆者は思います。

みなさん一人一人のライフスタイルや価値観に合わせ、無理せず可能な範囲で実践するのが、ご自身の心と身体にとっても、そして、サステナブル(持続可能)な社会にとっても大切なことかもしれません。

ベジタリアンよりも更に実践しやすいフレキシタリアンペスカタリアンなど、他の選択肢がありますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

ベジタリアンとヴィーガン、どっちが先?

ヴィーガンとベジタリアンはどっちが早い?ベジタリアンとヴィーガンの違いを紐解いてきましたが、そもそもどっちが先で、どんな背景があってふたつの違いが生まれたのでしょうか。

最後に簡単に、ベジタリアンとヴィーガンの歴史についても見ておきたいと思います。

ベジタリアンの起源

まずベジタリアンですが、ベジタリアン(Vegetarian)という言葉が書かれた現存する最古の書物は、1842年に書かれたイギリスの機関紙(Alcott House Journal)だそうです(参考)。

これがベジタリアンの始まりと考えられていて、今から180年ほど前、日本がまだ江戸時代だった頃に生まれた言葉ということになります。

それよりも古くから日本には精進料理があり、また、古代ギリシャにおいても「お肉やお魚などを口にしない食生活」が存在していたと考えられていますが、今も残るベジタリアンは19世紀が始まりとされています。

ヴィーガンの起源

ヴェジタリアンとビーガンの起源とその由来などの歴史一方のヴィーガンですが、ヴィーガン(Vegan)という言葉が最初に使われたのは1944年とされています(参考)。

ベジタリアンが登場してから約100年も経っていますので、ヴィーガンよりもベジタリアンの方が100年も先ということになります。

イギリスのヴィーガン協会の創業者、ワトソン氏は「ヴィーガンという名は、ベジタリアンの短縮系」と発言もしていて、ベジタリアンを元にして生まれたヴィーガンということが見て取れます(参考)。

ヴィーガンの語源など、歴史に関する詳細は別記事もご覧ください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

「お肉とお魚を食べない」ベジタリアン」と、「お肉とお魚、そして乳製品も卵も食べない」ヴィーガン。

計12種類以上と多岐にわたる菜食主義ですが、「お魚食べてOK」なペスカタリアンや、「お肉を減らすだけ」のフレキシタリアンなど、中にはとても柔軟なタイプも存在します。

どれも一長一短ではありますが、ご自身のライフスタイルや価値観に合わせて、できそうなコトから始めてみても良いかもしれません。