ヴィーガンとベジタリアンの違いは?菜食主義ごとのルールや動機、健康効果を徹底検証

ビーガンとベジタリアンの違いは卵と牛乳にある?

「野菜しか食べない」というイメージの強いベジタリアンやヴィーガンなどの菜食主義。

しかし、一口に菜食主義と言ってもその種類は多岐に渡り、それぞれに「食べるモノ・食べないモノ」の基準が異なります。

深刻化する環境問題への危惧や、自身の健康への懸念、動物愛護的な価値観など、様々な動機で実践されるヴィーガンやベジタリアン。

微妙な違いで細分化される菜食主義ですが、一方で、個々の価値観や生活スタイル次第で、意外と柔軟に解釈することもできます。

今回は、ヴィーガンとベジタリアンの違いや実践する背景、それぞれのメリット&デメリットなどをみていきたいと思います。

ヴィーガンとベジタリアンは何が違う?

ビーガンとベジタリアンの違いと共通点は?

序章の通り、「食べるのは植物だけ」という印象の強い菜食主義ですが、ヴィーガンとベジタリアンの違いはどんなところにあるのでしょうか?

そんな二つの菜食主義について、まずは「食べるモノ・食べないモノ」にフォーカスして比較してみます。

「食べる/食べない」の共通点

日本語では菜食主義と訳されるベジタリアンと、完全菜食主義や純菜食主義などと訳されるヴィーガン。

この二つの食生活の「食べないモノ」の共通点を表にしてみます。

カテゴリー
ベジタリアン × ×
ヴィーガン × ×

ベジタリアンもヴィーガンもお肉とお魚は食べない

上の表の通り、ベジタリアンもヴィーガンも、どちらもお肉とお魚を食べない食生活です。

お肉に関しては、ベジタリアンもヴィーガンも基本的に同じスタンスで、牛肉や豚肉、鶏肉など一般的なお肉類から、羊肉や鹿肉、七面鳥(ターキー)、クジラ肉など、生物の種類を問わずに「肉」と捉えることのできる食品を口にしません。

また、そうした生物から抽出したエキスや油なども避け、鶏ガラや豚骨、ラード、ゼラチンなどが使用された食品も食べないことが一般的です。

魚介類も全て食べないベジタリアンとヴィーガン

ベジタリアンとヴィーガンは、お魚に関しても共通のスタンスです。

マグロなどの魚類はもちろんのこと、エビなどの甲殻類、牡蠣などの貝類、タコなどの頭足類など、生物の種類を問わずに「魚介類」とされる食品を口にしません。

さらに、鶏ガラがNGなのと同様に、カツオ出汁などの魚介エキスを使って味付けされたものや、オイスターソースなど貝類の成分を含む食品も、例え具材が野菜だけだとしても避けるのが一般的です。

また、かまぼこやちくわなども魚を原料にしていますので、そのような食品もベジタリアンとヴィーガンに共通して「食べないモノ」に含まれます。

調理器具や揚げ物の油を気にする人も?

ベジタリアンやヴィーガンの中には、上述のような食材が原材料として使用されていなくても、それらと共通の器具や油で調理されたものを嫌う人も一部います。

例えば、お肉やお魚を焼いた鉄板をそのまま(洗わずに)使って調理された焼き野菜や、トンカツを揚げたのと同じ油で料理された野菜の天ぷらなどです。

ただ、これらをどこまで気にするかは個人差が大きく、ベジタリアンやヴィーガンでも「調理器具とか多少の香りくらいは全然気にしない」という人もいます。

※菜食主義者に料理を提供する立場の方は、調理前に「同じ調理器具ですが」などと伝えておくとより安心かもしれません。

「食べる/食べない」の違い

ビーガンとヴェジタリアンの食事における制限の違い

お肉やお魚、そして、それらのエキスなども避けるベジタリアンとヴィーガン。

ここまで共通点をみてきましたが、二つの違いもみてみましょう。

少し食品群を広げて「食べるモノ・食べないモノ」を改めて表にしてみます。

カテゴリー 蜂蜜
ベジタリアン × ×
ヴィーガン × × × × ×

卵も乳製品も食べないヴィーガン

上の表からも見て取れるように、お肉とお魚を食べないベジタリアンに対して、ヴィーガンはお肉とお魚に加え、乳製品も卵も食べないことが特徴です。

ヴィーガンが避ける乳製品は牛乳だけでなく、乳から作られているバターやチーズ、アイスクリームやヨーグルト、乳を原材料に含む食パンやミルクチョコレートなどの食品、さらにはヤクルトなどの乳酸菌飲料も対象です。

卵に関しても同様に、目玉焼きやなどの卵料理だけでなく、卵を原材料に含むマヨネーズ、卵を含む天ぷら粉を使った揚げ物、生地に卵を使用するお好み焼きなども基本的に口にしません。

ヴィーガンは蜂蜜も白砂糖もだめ?

どこまで気にするかは人により異なりますが、ヴィーガンは蜂蜜も口にしない場合があります。

さらに、厳格なヴィーガンの中には、製造工程で骨炭(牛の骨)を使用した白砂糖を避ける人も一部います。

ただし、ヴィーガンの中にも「砂糖に関しては気にしない」という方や、「天ぷら粉に入っている卵くらいは仕方ない」と考える方もいますので、線引きは個人により異なります。

ベジタリアンは鶏卵OKでも魚卵はNG?

また、鶏卵OKなベジタリアンでも、魚卵は食べないケースが多いことには少し注意が必要です。

「ベジタリアンは卵OKなのに?」と感じると思いますが、動物愛護(エシカル)的な動機で実践しているベジタリアンでは、

  • 鶏卵は親鶏が生き続けられるけど、魚卵は親魚のお腹を割くから。
  • 鶏卵は無精卵だから(子供が生まれないから)。

などの理論で、鶏卵はOK、魚卵(イクラやタラコ、数の子など)はNGとする場合があります。

※料理を提供する側の方は、ベジタリアンには「魚の卵は食べれる?」などと事前に確認しておくと安心かもしれません。ヴィーガンの場合はもともと全ての卵がNGですので、魚卵について確認する必要はありません。

ベジタリアンの細分化と他の菜食主義

ビーガンとヴェジタリアン以外に魚を食べる菜食主義も?
基本的には上述の通り、ヴィーガンかベジタリアンかの二種類という認識で問題ありませんが、ベジタリアンをさらに細分化して呼ぶこともあります。

あまり聞くことは多くないかもしれませんが、念のため確認しておきましょう。

卵だけ食べたり、乳製品だけ食べたりもするベジタリアン

ベジタリアンの中には考え方や体質(アレルギー等)の違いにより、

  • 乳はダメ、卵はOK
  • 乳はOK、卵はダメ

というタイプがあります。

乳を意味する「ラクト(Lacto)」、卵を意味する「オヴォ(Ovo)」という単語を使って、下の表ように分類することができます。

カテゴリー
ラクト・ベジタリアン × × ×
オヴォ・ベジタリアン × × ×

ちなみに、ベジタリアンをこのように細分化した場合には、普通のベジタリアン(卵も乳もOK)は、ラクト・オヴォ・ベジタリアンと呼ばれることがあります。

カテゴリー
ラクト・オヴォ・ベジタリアン × ×

※ラクト・オヴォ・ベジタリアン = ベジタリアンです。

ややこしい細分化ですが、「基本的にベジタリアンは卵と乳OKだけど、どちらかNGな人もいる」という程度に頭に入れておくと良いかもしれません。

魚を食べるベジタリアンも?

また、野菜だけのイメージが強いベジタリアンですが、「お肉だけを食べず、魚やエビなどの魚介類は食べる」というペスコ・ベジタリアンと呼ばれるタイプもあります。

カテゴリー
ペスコ・ベジタリアン ×

※ペスカタリアンとも呼ばれるこの食生活は、魚を食べるので厳密には菜食主義というより魚菜食主義ですが、学術論文等ではベジタリアンの一種として扱われています。

精進料理やマクロビも菜食?

仏教の精進料理やマクロビ(マクロビオティック)も菜食として知られています。

これらは宗教的思想を背景としたもので、栄養学などに基づく食生活ではありませんので本記事では割愛します。

また、ハラールやコーシャーは菜食主義に当たりませんので、これらもここでの解説は省きます。

食事以外での違い

ビーガンレザーやビーガンコスメなど食事以外のビーガニズム

「お肉とお魚を食べない」ベジタリアンに対して、「お肉とお魚だけでなく、卵も乳も食べない」というヴィーガン。

ここまで食べ物にフォーカスして二つの違いを比較しましたが、ここからは食事以外の違いもみていきたいと思います。

食以外での一番の違いは、ベジタリアンという言葉が食生活を表している一方で、ヴィーガンは生活のあらゆるシーンで使える概念である点です。

ファッションにおけるヴィーガニズム

食生活以外を含む広義のヴィーガンは、「動物性素材を使用していない/動物を搾取していない」という意味で解釈することができます。

例えばファッション領域では、非動物性原料からできた革を模した製品をヴィーガンレザーなどと呼ぶことができます。

一方でベジタリアンは食生活の概念であるため、ベジタリアンレザーというような言葉が使われることはありません。

ヴィーガンの中にも食以外では動物性か否かを気にしない人もいますが、動物愛護を理由としたエシカル・ヴィーガンの場合、レザーのみならずウールやダウン、毛皮などの使用も避けることが一般的です。

化粧品など日用品におけるヴィーガニズム

また、ヴィーガンという言葉が化粧品やシャンプーなどの日用品に対しても使われることがあります。

上記のエシカル・ヴィーガンは基本的に動物実験にも反対で、商品の研究開発過程における動物実験の有無も「使う/使わない」の判断基準の一つとなることがあります

例えば、ラッシュ(LUSH)というメーカーのスキンケア・ヘアケア商品は、動物性原料を使わず、動物実験も行わないことで知られていますが、これらをヴィーガン向けスキンケア商品などと表現することができます。

他にも、同じような条件を満たした化粧品を、ヴィーガンコスメなどと呼ぶことができます。

※医学や薬学なども含むと動物実験は不可避なため、あくまで可能な範囲で「もし動物実験をしていないオプションがあれば、そちらを選ぶ」というくらいのスタンスが一般的です。

ベジタリアンであり、ヴィーガンである場合も?

ベジタリアンは食生活以外の場面で使われることはありませんが、ベジタリアンは皆「革製品OK」ということを意味するわけではありません。

過度に言葉の定義にこだわる必要はないかと思いますが、単にベジタリアンという言葉が食事以外に適用できないだけで、

  • 食事はベジタリアンだけど、革製品は買わない(衣類に関してはヴィーガン)

というようなケースもあります。

逆に、動物愛護以外(環境や健康)を動機とするヴィーガンの中には、

  • 乳製品も卵も食べない(食に関してはヴィーガンだ)けど、革ジャン好き(食以外はヴィーガンではない)

なんて人もいます。

ベジタリアンとヴィーガンの起源

ヴェジタリアンとビーガンの起源とその由来などの歴史

共通点もありながら、違いも多々あるベジタリアンとヴィーガンですが、そもそもどっちが先で、どうしてこのような違いが生まれたのでしょうか?

ベジタリアンとヴィーガンの起源を紐解き、違いが生まれた背景もサクッとみてみます。

19世紀に誕生したベジタリアン

二つの起源について簡単に説明すると、元々はベジタリアンという概念だけ存在し、そこから派生してできたのがヴィーガンです。

ベジタリアン(Vegetarian)という言葉が記載された現存する最古の書物は、1842年に書かれた機関紙(Alcott House Journal)で、これがベジタリアンという概念の始まりとされています。

※お肉やお魚などを意図的に口にしない食生活は古代ギリシャから存在すると考えられていますが、ベジタリアンという言葉が使われるようになったのは上記の通り19世紀からです。

ヴィーガンはベジタリアンから派生した造語

ヴィーガン(Vegan)という言葉が使われるようになったのは、ベジタリアンの誕生から約100年後の1944年とされています。

「お肉とお魚は食べないが、乳と卵は口にする」という当時のベジタリアンの定義に疑念を抱いた人々によって「乳も卵も食べない」という概念が新しく生み出され、この1994年にはイギリスでヴィーガン協会(Vegan Society)が設立されています。

ちなみにヴィーガンという言葉は、ベジタリアンの最初と最後の文字を繋ぎ合わせたものであると、ヴィーガンの名付け親であるドナルド・ワトソン氏がインタビューで証言しています。

Veg-etari-an」の太字部分だけとって「Vegan」ということのようです。

ベジタリアンの語源はベジタス?

また、ベジタリアンの語源は野菜という意味の英語であるベジタブル(Vegetable)で、よく語られる「ラテン語のベジタスが由来」という説には実は証拠が存在していません文献, 国際ベジタリアン連合, 英ベジタリアン協会)。

「ベジタスが語源」は誤りですが、モノ・コトが持つ意味は時代とともに変化していくものです。

言葉の意味に様々な含みを持たせるのは素敵なことだと思いますし、個々の解釈に対して異論を唱える意図はありません。

※「健全な、活気のある、生命力のある」などの意味のベジタス(Vegetus)がベジタリアンの語源だという説は、1906年出版の書籍(The Logic of Vegetarianism)に書かれた、著者(Henry Salt)の個人的な解釈を発端に広まった後付けの理論とされ、「ベジタスが語源」だとする書物や記録は現在までに見つかっていません。日本ベジタリアン協会のサイトにも「ベジタスが由来」との説明がありますが、史実に基づいていません。

ヴィーガンやベジタリアンになる理由は?

さて、ここまではベジタリアンとヴィーガンの違いやそれぞれの特徴についてみてきました。

でも一体なぜ、人々はこのような制限の多い、普通に考えれば面倒な食生活を実践するに至るのでしょうか?

ここからは、ベジタリアンやヴィーガンの「なぜ?」についてみていきます。

菜食主義の健康メリット

ビーガンやヴェジタリアンなどの健康メリットは?

ベジタリアンやヴィーガンの実践動機の一つに、動物性の食品は健康のために食べない方が良いと捉える視点があります。

お肉やお魚を食べない菜食主義の食生活では、肥満や糖尿病、癌や心疾患、さらにはアルツハイマーなどのリスク低減につながる可能性も示唆されています(論文1, 論文2, 論文3, 論文4, 論文5, 論文6, 論文7, 論文8)。

もう少し詳しく見てみましょう。

菜食主義はダイエットに効果的?

菜食主義の健康メリットの一つが、肥満予防への寄与です(論文9, 論文10, 論文11, 論文12, 論文13, 論文14, 論文15)。

菜食主義と肥満の関係は様々な研究で検証されていますが、例えば、18週間での体重変化を検証した研究では、ベジタリアンはお肉やお魚を含む食生活と比較して約2kg体重を減らしやすいということが示唆されています(論文16)。

他にも、お肉やお魚を食べながら実施する低カロリーダイエットよりも、普通に食べるベジタリアンの方が2倍近くダイエットに効果的だという可能性を示す研究もあります(論文17)。

これらの研究に基づくと、菜食主義は体重や体型のコントロールに適した食生活と考えることができます。

菜食主義は糖尿病になりにくい?

また、菜食主義実践による糖尿病リスク低減を示唆する研究もあります(論文1, 論文18, 論文19, 論文20, 論文21)。

例えばある研究では、雑食から菜食に切り替えることで糖尿病リスクが53%下がる可能性が示されています(論文22)。

研究結果がそのまま全員に当てはまることはまずありませんが、菜食主義による糖尿病予防効果を示唆する研究が多数あることは、注目に値する点です。

菜食主義者は癌になりにくい?

糖尿病や肥満に加え、菜食主義による癌リスク低減を示す研究も存在します(論文23, 論文24, 論文25, 論文26, 論文27)。

世界保健機関(WHO)が牛肉やハムなどを発ガン性物質に指定するなど、特定の肉類には発癌作用があると考えられています(論文28, 論文29, 論文30, 論文31, 論文32)。

例えばWHOは、1日50gの加工肉を食べることで、大腸ガンのリスクが18%上がるとしています(論文28)。

こうした動物性食品を食べない菜食主義は、乳ガンや大腸ガン、胃ガンなどの癌発症リスク低減に繋がる可能性が示唆されています(論文24, 論文25, 論文26, 論文23, 論文27)。

菜食主義者は心臓病になりにくい?

また、ベジタリアンやヴィーガンなどの菜食主義は、心臓病などの循環器系疾患のリスク低減に繋がるとも考えられています(論文19, 論文25, 論文33, 論文34, 論文35, 論文36, 論文37, 論文38)。

例えばある研究では、雑食と比較してベジタリアンは、心疾患リスクを1/3に抑えるという可能性が示されています(論文33)。

また、乳製品や卵も摂取しないヴィーガンにおいては、心疾患での死亡率が最大42%低減されたと示す研究もあります(論文37)。

菜食主義での健康リスクには要注意

上述したような健康メリットが考えられる一方で、菜食主義では栄養失調などの健康リスクにも気をつける必要があります。

気になる方はこちらの記事でチェックしてみてください。

菜食主義の環境メリット

地球温暖化対策にもなるビーガンやヴェジタリアン
上述した健康面に加え、昨今その影響が顕在化している地球温暖化などの環境問題も、ベジタリアンやヴィーガンを実践する背景にあります。

ここ数年、森林火災や熱風被害、台風などの豪雨等による被害が世界中で拡大し、私たちの日常生活への影響も顕在化している地球温暖化。

その原因となっているのが、人間の活動に由来する温室効果ガス排出です(論文39, 論文40, 論文41, 論文42, 論文43, 論文44, 論文45, 論文46)。

この温暖化対策の一つとしても、ベジタリアンやヴィーガンなどの菜食主義実践が挙げられています(論文47, 論文48, 論文49, 論文50, 論文51)。

地球温暖化への影響が大きいお肉

温室効果ガスというと、火力発電や車の排気ガスなどがまず頭に浮かぶかと思いますが、食糧生産においても多くの温室効果ガスが排出されています。

例えば国連の計算では、輸送セクター(車や飛行機、船など全ての輸送機関)から出ている温室効果ガスは全体の14%農畜産業から出る温室効果ガスは全体の24%となっていて、食べ物の中で最も温暖化への影響が強いのが肉類(主に牛)です(論文47, 論文48, 論文49, 論文50, 論文51)。

「お肉抜き」が地球温暖化対策に?

どんな食べ物を生産するにも温室効果ガスの排出は伴いますが、肉などの動物性と比較して、植物性(一部の例外を除く)は栄養価あたりの温室効果ガス排出量が低い食糧です(論文48)。

例えば、オックスフォード大学の研究では、通常の食生活からお肉と牛乳を摂取しない食生活に切り替えることで、一人当たりの温室効果ガス排出量を49%低減できると算出されています(論文47)。

植物性食品はエコカーならぬエコフード

ガソリン車の使用を避け、代わりにエコなハイブリッドカーや電気自動車に乗ることで温暖化への影響を減らすことができるのはご存知の通りです。

それと同様に、上記したような研究を基にすると、動物性食品の消費を減らし、代わりに植物性の食品を食べることは、環境問題悪化への影響を減らすことに繋がります。

健康面に加え、環境負担低減をメリットと捉えて菜食主義を実践する人もいます。

菜食主義の動物福祉メリット

ビーガンやヴェジタリアン実践理由の一つの動物福祉
健康や環境におけるメリットに加え、動物福祉的な動機でベジタリアンやヴィーガンを実践するケースもあります。

人間の食料として処理される動物に対して「残虐」や「かわいそう」と感じるかどうかは個人の価値観や思想次第ですので、ここではあまり深くは掘り下げませんが、いくつか畜産に関する数字をみておきたいと思います。

年間約640億の屠殺

国連の計算では、1年間あたり世界全体で、約620億羽の鶏(ニワトリ)に加え、約15億頭の豚と約3億頭の牛が、人間の食料として屠殺されています(統計52)。

この3種の合計は年間638億となり、約75億人の世界の人口の約9倍の数になります(統計53)。

大きな数字ですので少しスパンを短くしてみると、1日あたり約74万、1秒あたり約2,023となります。

意外と多い日本国内の家畜や家禽

日本だけに限定してみます。

令和元年12月時点、農林水産省によると国内で牛が約383万頭(お肉用が約250万頭、乳牛用が約133万頭)飼育されています。

これに加えて豚が約915万頭、鶏が約2億8,000万羽(お肉用が1億3,800万羽、卵用が1億4,200万羽)が飼育され、合計約3億の家畜・家禽がいると農林水産省が算出しています。

また、年間でお肉として出荷された鶏の数は約6億9,500羽で、1秒あたりは22羽と計算できます。

この数値をどう捉えるかは人それぞれです。ただ、こうした現実に胸を詰まらせ「1でも減らせるならば」という思いから菜食主義を実践する人もいます。

※鶏の出荷数が飼育数よりも多いのは、鶏が短期間で出荷可能なため、「飼育 → 出荷 → 新たに飼育 → 出荷」を一年の間に複数回繰り返すことができるためです。飼育数は、一年間のある瞬間において飼育されている数ですので、一年間の累計ではありません。

ヴィーガンとベジタリアンはどっちが良いの?

ビーガンとヴェジタリアン、結局どっちの方が優秀?
細かいところに違いはあるものの、基本的に動物性食品を避けて生活し、メリットも享受できるベジタリアンとヴィーガン。

でも、なぜわざわざベジタリアンではなく、より制限の多いヴィーガンを実践する人がいるのでしょう?

ここからは、「結局どっちが良いの?」という点にフォーカスして、二つの菜食主義を比較してみます。

ヴィーガンの方がより健康的?

まずは、健康面です。

お肉とお魚を食べないことに加え、乳製品も卵も摂取しないことにより、健康への影響にどんな変化があるのかみてみましょう。

ヴィーガンは疾患リスクがさらに低くなる?

乳も卵も摂取しないヴィーガンでは、上述した菜食主義の健康メリットがより高まる可能性が示唆されています。

例えば、ベジタリアンよりもヴィーガンの方がより肥満になりにくい、すなわち、ヴィーガンの方がよりダイエット効果が高いとする研究があります(論文27, 論文54, 論文55)。

また、肥満だけでなく、糖尿病や心疾患、癌などのリスクもヴィーガンの方が低い傾向にあることも、いくつかの研究で示唆されています(論文1, 論文20, 論文23, 論文27)。

乳製品と卵特有の成分が影響?

このような傾向は、乳製品に含まれ、発ガン性が指摘されるエストロゲン(論文56, 論文57, 論文58, 論文59)や、循環器系疾患との関連が指摘される飽和脂肪酸、卵に含まれるコレステロール(論文60, 論文61)などが背景にあると考えらます。

ベジタリアンはあまり環境によくない?

ベジタリアンはヴィーガンに比べて環境に悪い?
温室効果ガスの排出量など、雑食よりも環境負担が低い菜食主義。

ですが、ベジタリアンとヴィーガンを比較すると、ベジタリアンよりもヴィーガンの方が遥かに環境負担が低く、最新の研究でもこれが示されています(論文49)。

ヴィーガンの温暖化抑止力は効果2倍

具体的には、ヴィーガンは温室効果ガス排出量を70%下げることができる一方、乳と卵を摂取するベジタリアンは30%程度の低減だと算出されています(論文62, 論文63)。

乳製品は、牛肉に次ぐ温室効果ガスの排出量が多い食品で(論文64)、ベジタリアンはそれらを含む食生活であるため、ヴィーガンとの間にこうした差が生まれます。

チーズやヨーグルトで温暖化?

さらに、乳を摂取するベジタリアンの食生活では、例えお肉とお魚をゼロにしても、逆にチーズやヨーグルトなどの摂取量を増やすとフレキシタリアン*よりも温室効果ガス排出量が多くなってしまうことも示されています(論文49)。

環境的な視点から見るとヴィーガンは、ベジタリアンよりも遥かに負担低減に寄与できる食生活だと言えます。

※この研究における比較対象のフレキシタリアンは、動物性食品の摂取を1/3程度に減らした食生活を指します。また、他の研究では、お肉と乳製品を食べないだけで、温室効果ガスの排出量を49%低減できるとも算出されています(論文47)。

ヴィーガンの方が動物愛護的?

また、健康と環境以外でも、ベジタリアンとヴィーガンの影響には違いがあります。

日本国内で飼育されている家畜や家禽は合計約3億と上記しましたが、このうち約半数の1億4,300万は卵もしくは乳製品用です(農林水産省)。

この数字から、ヴィーガンはベジタリアンよりも、さらに動物の使用が減らせる食生活だと言えます。

ベジタリアンの方が栄養失調になりにくい?

ビーガンよりもベジタリアンが栄養不足になりにくいのは卵のおかげ?

健康や環境、動物福祉への影響度合いの違いから、ヴィーガンの方が「自分の価値観に合っている」と感じた方もいらっしゃるかと思います。

ただし、ヴィーガンにはデメリットもありますので、ベジタリアンの方が優れている点もチェックしてみます。

菜食主義者が不足しやすい栄養素

ヴィーガンやベジタリアンなどの菜食主義者は、お肉やお魚を食べる食生活と比較して、特定の栄養素が不足しやすい傾向にあります。

具体的にはビタミンB12やビタミンDなどのビタミン、カルシウムや鉄分などのミネラル、オメガ3脂肪酸などです(論文65, 論文66, 論文67, 論文68

ベジタリアンの方が摂取が簡単な栄養素も?

これらの栄養素が不足した状態が続くと、免疫機能の低下や神経系の障害、骨密度の低下、更には精神障害など、様々な健康障害を引き起こす危険性があります(論文69, 論文70, 論文71, 論文72)。

こうした栄養素の中で、ビタミンB12と鉄分、オメガ3脂肪酸とカルシウムにおいては、ベジタリアンよりも一層ヴィーガンの方が不足しやすいことが確認されています(論文68, 論文66, 論文73, 論文74)。

ベジタリアンも要注意だが…

しっかりと栄養学に基づいて実践していれば、これらの栄養素はヴィーガンでも十分に摂取可能です(論文65, 論文66, 論文75, 論文76)。

ですが、乳製品と卵を食べるベジタリアンよりも、動物性ゼロのヴィーガンはより一層栄養不足に注意する必要があると言えます。

また、上記の通り、どちらの菜食主義においても特定の栄養素が不足しやすい傾向にありますので、「ベジタリアンだから栄養素は安心」ということではありません。

ベジタリアンの方が生活に困りにくい?

栄養面に加えて、乳製品や卵を含むベジタリアンは、ヴィーガンと比較して食べられる食材が多岐に渡ります。

例えば、乳成分はベーグルやフランスパンを除くほぼ全てのパン類に含まれていますし、天ぷらの衣や中華麺などの原材料にも一般的には卵が使用されます。

卵や乳は、調理におけるつなぎや補助原料としても様々な役割で使用され、幅広い食品に含まれています。

これらを制限しないベジタリアンは、外食でも料理をする際にも制限されることが少ない、より実践ハードルの低い菜食と言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょう?

「お肉とお魚を食べないベジタリアン」と「お肉とお魚、そして卵も乳製品も食べないヴィーガン」の違いについて、詳しくみていきました。

菜食主義は健康や環境、動物福祉など、様々な動機・価値観をもとに実践されていて、一口にヴィーガンやベジタリアンと言っても様々な考えを持った人がいることが見えてきたかと思います。

みなさんは、どこか腑に落ちるポイントはありましたでしょうか?

ヴィーガン以外にも、ペスカタリアンというお魚を食べるベジタリアンや、もしかしたらベジタリアンよりも環境に優しいフレキシタリアン(動物性食品を減らすだけ)などもあります。

厳格そうなイメージもある菜食主義ですが、あまり言葉の定義や周りの見解にとらわれる必要はありません。

一人一人の価値観や生活スタイルに合わせ、気軽に試してみていただければと思います。