ベジタリアンは鶏卵を食べて魚卵を食べず?菜食の卵アリ・ナシ境界線

卵入りベジタリアン料理

様々な種類がある”菜食”の中で、最もポピュラーで実践者も多いのがベジタリアン(Vegetarian)。

「野菜だけ」というイメージが強い菜食ですが、実はベジタリアンは牛乳やチーズなどの乳製品や、鶏卵などの鳥類の卵は食べています。

しかし、乳や卵は何でも大丈夫かというとそうではなく、目玉焼きは食べても、イクラや明太子などの魚卵はNGなんです。

菜食主義者でない人にとってはいささか意味不明で、理解しがたいこの境界線。

今回は、そんな”ベジタリアンにとっての卵”について解説して行きます。

ベジタリアンの基本情報

ベジタリアンの料理

まず、基本的な情報からお伝えすると、ベジタリアン(Vegetarian)は、お肉やお魚を一切口にしません。

日本にはたまに「ベジタリアンだが鶏肉は食べる」とか「ベジタリアンだがお魚は食べる」と言う人がいますが、厳密にはそれらはベジタリアンには当てはまりません。

もし海外からゲストが来て「私はベジタリアンです」と言った場合、「肉・魚は種類を問わず、全て食べない」ことを意味していますので、くれぐれも「鶏肉は?え、魚は!?」というような質問はしないようにしましょう。

カツオ出汁や鶏ガラなどもNG

また、ベジタリアンの「お肉やお魚を食べない」主義は、調理や加工の方法にも左右されません。

例えば、お肉が見えないくらいに細かくすりつぶされていてもダメですし、かまぼこやちくわみたいに原型がなんだか全く分からない状態になっていても、原料に動物性のものが使われていたら食べることができません。

味付けにも使用できない肉と魚

さらに、お肉やお魚など動物性の食材からでるダシもNGです。しかも、例えダシ目的でなかったとしても、お肉やお魚と一緒に料理された野菜なんかも食べることも避けます。

見た目は超ベジタリアンな野菜炒めでも、味付けにチキンエキスとか鰹ダシなどが入っていてはダメですし、「美味しいから」と、ベーコンと一緒に炒めたりしてももちろんNGです。

鶏卵は食べ、魚卵は食べないベジタリアン

アスパラ卵サンドイッチ

お肉・お魚に関してはとてもうるさい一方で、「野菜だけ」のイメージが強いベジタリアンでも、ニワトリなどの鳥類の”卵”は食べることができます。

この考えにあなたが同意できるかどうかはさておいて、ベジタリアンにとって卵のような液体は、”まだ”生き物ではないことになっています。

鶏卵は親鳥が生き続けるからOK

卵が”まだ”生き物としてみなされないことに加えて、親鳥が産卵後に生き続けられることも、ベジタリアンが卵を食べることができるポイントになります。

特に動物愛護的な動機で実践しているベジタリアンにとっては、「採卵しても誰の命を奪わない」ということが大変重要なのです。

魚卵は親魚の犠牲を伴うのでNG

また、卵そのものは生き物とみなしていないベジタリアンですので、その理論だと魚卵も食べられるはずなのですが、それを食べない理由は採卵方法にあります。

上述通り、鶏卵などは産卵後(親鳥の体外に排出された後)に採取しますが、魚卵の場合、産卵前に親魚の腹を切り開く必要があります。

採卵過程で親魚の犠牲を伴うため、イクラや明太子、キャビアなどの魚卵はベジタリアンにとってNGとなるのです。

同じ理論で牛乳も飲める

ベジタリアンは、牛乳やチーズなど、動物の乳でできた食べ物を口にしますが、これも鶏卵を食べれるのと同じ理由です。

ミルクの生産に牛は必要不可欠ですが、採乳後もその牛は生き続けるとこができるので、ベジタリアンにとっては問題ないのです。

ベジタリアンは鶏卵も乳もOK

牛乳と卵とチーズ

現在は、”ベジタリアン = 鶏卵・乳OK”という認識が世界中で浸透していますが、少し前までは、”ベジタリアンは卵も乳も摂らない”と認識している人も少なくありませんでした。

この変化は、近年の”ビーガン(Vegan)”という言葉の台頭によって起きたのですが、ネット上には曖昧な情報も多いので、念のため、現在世界で浸透しているベジタリアンとビーガンの定義もサクッと確認しておきましょう。

卵・乳・蜂蜜も食べないのがビーガン

ベジタリアンがお肉とお魚を食べない食生活であるのに対し、ビーガンは、お肉やお魚に加え、乳・卵・蜂蜜など、生産工程に動物が関わる全ての食材を排除しています。

現代の菜食のカテゴリー分けを簡単に書くと、以下の表のようになります。

カテゴリー 牛乳 鶏卵 蜂蜜
ベジタリアン × ×
ビーガン × × × × ×

ビーガン普及前の旧式菜食分類

しかし、ビーガンという言葉がこれほどまで浸透したのはここ最近で、その前は、ベジタリアンという呼び名をベースに、乳を意味するラクト(Lacto)と、卵を意味するオボ(Ovo)という単語を組み合わせて、「乳や卵を食べるのか、食べないのか」を表現していました。

  • ラクト・ベジタリアン(Lacto Vegetarian):乳はOKだけど卵はNG
  • オボ・ベジタリアン(Ovo Vegetarian):乳はNGだけど卵はOK
  • ラクト・オボ・ベジタリアン(Lacto-ovo vegetarian):乳も卵もOK

ラクト(乳)とオボ(卵)で分類するベジタリアン

ビーガンが浸透する前によく使われていた菜食カテゴリーをまとめると、この表のようになります。

旧式カテゴリー 牛乳 鶏卵
ベジタリアン × × × ×
ラクト・ベジタリアン × × ×
オボ・ベジタリアン × × ×
ラクト・オボ・ベジタリアン × ×

この表でのベジタリアンは、現在ではビーガンに置き替わっていて、乳や卵を摂取するその他の3種類の菜食のことを、総称してベジタリアンと呼ぶようになっています。

念のため「乳と卵」だけは確認を

ビーガンの浸透によって菜食の分類が以前よりも分かりやすくなりましたが、住んでいる国や年齢によっては「ベジタリアン」の定義が異なるケースが存在することも、頭に入れておきましょう。

海外では、「ベジタリアンです」と言いながら「鶏肉は食べる」というような日本ほどの飛び抜けたケースはありませんが、ベジタリアンと言いながら、卵や乳を摂取しない人もゼロではありません。

ビーガンと言われたら卵も乳も120%NGですが、ベジタリアンと言われた場合、念のため「卵や乳製品は大丈夫ですか?」とだけ確認してもいいかもしれません。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は、知らない人からするとややこしい、”ベジタリアンの卵”に関する境界線を解説しました。

細かいところはさておいても、ベジタリアンは「鶏卵OK魚卵NG」という点だけでもざっくりと頭に入れておけば、どこかできっと役に立ってくれると思います。

菜食者向けの献立やメニューを考える際はもちろん、海外からのゲストへの対応向上にも繋がると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。