ペスカタリアンは魚を食べる菜食?ベジタリアンとの違いやメリット&デメリット

サーモンと野菜で料理

最近耳にすることも多くなった、ベジタリアンやヴィーガンなどの菜食主義。

お肉やお魚など、動物性の食品を口にしないことで知られるこれらの食生活ですが、実は魚を食べるベジタリアンも存在するのはご存知でしょうか?

魚を食べるベジタリアンは、ペスコ・ベジタリアンペスカタリアンと呼ばれ、その実践ハードルの低さや健康メリットから、今注目度が増している食生活です。

魚介類は日本食にとって欠かせない食材の一つで、魚介出汁もダメなベジタリアンやヴィーガンは外食や料理で苦労することも。

でもこのペスカタリアンなら、レストランで食べられるメニューも多く、料理の幅も広がります。

そんなペスカタリアニズムについて、実践する動機やメリット、始め方などについて解説していきます。

ペスカタリアンの基礎知識

ビーガンやベジタリアンは食べないが、ペスカタリアンは食べる海鮮丼
ペスカタリアンやペスコ・ベジタリアンと呼ばれる食生活は、どのようなものなのでしょうか?

序章にも書いた通りですが、一般的に「お肉もお魚も食べない」というベジタリアンなどの食生活に対して、ペスカタリアンは「お肉は食べないけど、お魚は食べる」という食のスタイルです。

「ペスカ」でも「ぺスク」でも正解

ペスカタリアンという言葉はあまり聞きなれないかもしれませんが、主に以下の2通りで発音されます。

  1. ペスタリアン(Pescatarian)
  2. ペスタリアン(Pescetarian)

一つ目のペスタリアンを使う人の方が海外でも多いですが、ぺスタリアンと呼ぶ人もいます。

ペスカの方が一般的なものの、どちらが間違っているというわけではなく、呼びやすい方を使って問題ありません。

また、人によってはペスカリアンと発音する場合もあります。

思い出せない時は「ペスカトーレ」

いずれにせよ少し覚えにくい名前ですが、「魚だけのベジタリアン、なんていうんだっけ…」なんて時には、ペスカトーレを思い出すといいかもしれません。

ペスカトーレと聞くと、色々なシーフードが入ったスパゲッティーが頭に浮かぶ方が多いかと思います。

ペスカトーレもペスカタリアンも、イタリア語の「魚(Pesce)」や「魚釣り(Pesca)」という意味のペスカを元にした単語です。

「魚介類を食べるペスカタリアン」という単語が出てこない時は、「魚介類たっぷりペスカトーレ」から連想しましょう。

ペスカタリアンとヴィーガン、ベジタリアンの違いは?

魚を食べるペスカタリアンと、魚も食べないヴィーガンやベジタリアンとの違い
魚介類を食べることができ、ゆるめの菜食主義とも言えるペスカタリアンですが、ヴィーガンやベジタリアンとの違いを表にしてみます。

カテゴリー 牛乳
ペスカタリアン/ペスコ・ベジタリアン ×
ベジタリアン × ×
ヴィーガン × × × ×

ペスカタリアンはざっくり言うとお肉以外はなんでも大丈夫で、表にある通り、牛乳やチーズなどの乳製品に加え、卵焼きやマヨネーズなどの卵を含むものも食べる食生活です。

ちなみにヴィーガンの場合、上の表以外に蜂蜜などの摂取も控えることがあります。

ペスカタリアンは魚介類全般OK

魚介類全般を制限しないペスカタリアンは、マグロやサーモン(鮭)などの魚類はもちろんのこと、エビやカニなどの甲殻類、牡蠣やアワビなどの貝類、イカやタコなどの頭足類も食べることができます。

カツオ出汁などの魚介エキスも排除するヴィーガンやベジタリアンと比較すると、ペスカタリアンが食べられる食材は多岐に渡ります。

外食でもそれほど困らない、とても実践ハードルの低い菜食主義(ベジタリアン)です。

※ペスカタリアンは魚を食べるため、厳密には日本語の「菜食主義」に当てはまりませんが、学術論文等ではペスコ・ベジタリアン(Pesco-vegetarian)のようにベジタリアンの一種として扱われます。

お肉に関しては厳格なペスカタリアン

ヴィーガンやベジタリアンと比べて制限の少ないペスカタリアンですが、基本的にお肉に関しては他の菜食主義と同じスタンスです。

ペスカタリアンは牛や豚、鶏などの肉類に加え、それらの内臓(もつやホルモンなど)も食べず、また、海外ではそもそも食べる人がほとんどいませんが、クジラやイルカも口にしません。

食材に関して「どこまで気にするか」には個人差がありますが、基本的には鶏ガラや豚骨、ラードなど、動物由来の原料(出汁や油)が入った食品も避けるのがペスカタリアンです。

ペスカタリアンの食べる・食べないの基準は?

ペスカタリアンは魚介類を食べてお肉は食べない
「お肉以外」というとシンプルに感じますが、そもそもお肉の定義がちょっと曖昧な気がしないでもないですよね。

ペスカタリアンにおいて、どんな要素に基づいて「食べる・食べない」の線引きすればいいのか、もう少し詳しくみていきます。

ペスカタリアンは哺乳類と鳥類を食べない

「動物」や「生き物」の定義や言葉の解釈は人それぞれ異なりますが、ペスカタリアンは基本的に、生物学上の哺乳類と鳥類を口にしないことが特徴と言えます。

牛肉や豚肉などはわかりやすい「食べないもの」ですが、海に生息している生物でもクジラなどもペスカタリアンの「食べないリスト」に含まれる理由は、それらが哺乳類であるためです。

また、チキンやターキー(七面鳥)などは鳥類ですので、これらもペスカタリアンが食べないモノに含まれます。

実践動機によって異なる線引き

基本的な線引きは上述の通りですが、どんな菜食主義にも「食べる・食べない」の基準に個人差があります。

また、「かわいそうだから〇〇を食べない」というイメージも強い菜食主義ですが、実践動機は動物愛護的なものだけではありません。

後述する健康や環境問題などを理由にお肉を食べないケースも多く、個々の「なんのために菜食主義なのか」という背景によって食べる、食べないの線引きにも違いが生まれます。

この先ではペスカタリアンの動機などについても見ていきますが、あまり定義にとらわれず、もし腑に落ちる部分があれば取り入れてみる、くらいの感覚で読んでいただければと思います。

ペスカタリアンが魚を食べて肉を食べない理由

ペスカタリアンはなぜ魚を食べてお肉は食べないのかの理由

ベジタリアンやヴィーガンと比較して食べられる食材が多く、外食や料理で困ることも少ないペスカタリアン。

でも、どうしてお魚は許容できて、お肉はダメなのでしょう?

そんなペスカタリアンの「なぜ?」について、もう少し掘り下げてみたいと思います。

ペスカタリアンの4つの動機

様々な動機から実践されるペスカタリアンですが、「肉は食べず、魚は食べる」という食生活を実践する背景には、主に以下の4つの理由があります。

  1. お肉は身体に悪いと考える
  2. お肉は環境に悪いと考える
  3. お魚に痛覚がないと考える
  4. ベジタリアンは難しいと考える

それぞれについて、詳しくみてみましょう。

お肉は身体に悪いと考える

ビーガンやベジタリアンは食べないが、ペスカタリアンは食べる魚介類の刺身
ペスカタリアン実践動機の一つに、お肉の摂取による健康懸念があります。

お肉は優秀なタンパク源やエネルギー源であることは疑いようがありませんが、同時にデメリットも存在する食品です。

例えば、世界保健機関(WHO)がお肉を発ガン性物質に指定していたり(論文1)、お肉の摂取が心臓病や糖尿病のリスクを高めることも数々の研究で指摘されています(論文2, 論文3, 論文4, 論文5)。

こうした肉食に起因する健康問題を理由に「お肉を食べない方がベター」と考えて、ペスカタリアンを実践する人がいます。

「肉抜き」でどんな健康メリットが?

ヴィーガンやベジタリアンのメリットとして、肥満や糖尿病、循環器系疾患のリスク低減等が知られていますが、複数の研究でペスカタリアンでも同様の恩恵が期待できると示唆されています(論文6, 論文7, 論文8)。

例えば、お肉を含む食生活よりも、ペスカタリアンの方が年間1.1kgも体重が増えにくい、すなわち、ペスカタリアンは普通の食生活より肥満になりにくいとする研究があります(論文8)。

ペスカタリアンは心臓病になりにくい?

また、お肉を含む食生活と比較してペスカタリアンは、糖尿病発症リスクが約30%低いと示す研究があったり(論文6)、心疾患による死亡率が22%下がるとした研究も存在します(論文7)。

上記の研究によると、魚も食べないヴィーガンなどに比べ効果は劣りますが、ペスカタリアンでも「お肉を食べないメリットをある程度は享受できる」と考えることができます。

オメガ3脂肪酸やビタミンB12が豊富な魚介類

また、疾患リスクの低減に繋がる可能性があるだけでなく、オメガ3脂肪酸やビタミンB12などの必須栄養素が魚介類に豊富に含まれることも、ペスカタリアンが好まれる理由の一つです(論文9)。

オメガ3脂肪酸やビタミンB12は、神経系や循環器系の機能、脳の働きや心の健康などにも影響を及ぼすとされる重要な栄養素です(論文10, 論文11, 論文12)。

植物性より効率の良い栄養素も

オメガ3脂肪酸は植物からも十分に摂取できる栄養素ですが、チアシードやくるみなどの植物性食品に含まれるのはALA(αリノレン酸)と呼ばれるオメガ3脂肪酸で、魚に含まれるDHAやEPAとは型が異なります。

植物のみの食生活では、摂取したALAを自分の体内でDHAとEPAに変換して利用しなくてはならないため、ヴィーガンなどでは「あれ、思ったよりオメガ3脂肪酸が足りてない」なんてことも起きやすいことが研究でも示唆されています(論文13, 論文14)。

一方でペスカタリアンは、お魚の体内で既に変換済みのDHAとEPAを直接摂取できるため、魚介類を食べない菜食主義と比較して、オメガ3脂肪酸不足になりにくい食生活です(論文15)。

また、植物性食品からの摂取が困難なビタミンB12は牡蠣などに豊富に含まれていて、こうした栄養素の摂取が容易である点もペスカタリアンが好まれる理由の一つです。

お肉は環境に悪いと考える

牛から排出されるメタンなどの温室効果ガスによる地球温暖化
「お肉を食べず、お魚を食べる」ことによる健康メリットに加え、畜産がもたらす環境問題への懸念の高まりも、ペスカタリアンを実践する人が増加している背景にあります。

環境問題といえば地球温暖化が最も深刻とされていますが、実は私たち人間の食べ物を生産する行程でも、想像以上の温室効果ガスが排出されています(論文16)。

お肉の地球温暖化への影響

地球温暖化対策として、電気自動車などのエコカーの推進や、風力や太陽光などの再生可能エネルギーの普及が注目を集めていますが、食糧生産においてもこれらと同じようなエコ化が急務とされています(論文17)。

国連によると、人間由来の温室効果ガスのうち、畜産(牛肉などの生産過程で排出されるガス)の合計は全体の約15%で、輸送セクター(車や飛行機、船などから排出されるガス)の合計は全体の14%です(論文16, 論文18)。

言い換えると、車もお肉も同じくらい地球温暖化に影響しているというのが今の状況で、ガソリン車から電気自動車への乗り換えと同じように、「お肉から他の食べ物への乗り換え」が求められている時代です。

「お肉抜き」で温暖化対策?

お肉だけでなく、どんな食べ物を作るのにも温室効果ガスの排出は伴いますが、例えばペスカタリアンのように「お肉抜き」の食生活を実践すると、温暖化への影響を46%下げることができるとした研究があります(論文19)。

後述する環境的デメリットを考慮すると、魚をたくさん食べる食生活が「サステイナブル」とは考えにくいものの、地球温暖化だけに焦点を当てればペスカタリアンは「お肉を食べるよりは環境に良い」と言うことができます(論文20)。

お魚には痛覚がないと考える

ペスカタリアンが食べても良い牡蠣や魚に痛覚はあるの?
健康や環境に加え、動物愛護的な動機からペスカタリアンを実践する人もいます。

アニマルウェルフェア(動物福祉)等を理由に食事を制限する人たちにとって、どのような環境で飼育されているかなどに加えて、その生き物がそもそも痛みを感じるかどうかも判断基準の一つの要素です(論文21, 論文22)。

魚介類は痛みを感じない生き物?

「魚が痛みを感じるかどうか?」は、生物学においても長年に渡って論争の的となっているテーマで、様々な見解が存在します(論文23, 論文24, 論文25, 論文26, 論文27, 論文28, 論文29, 論文30, 論文31)。

そもそも「痛み」の定義は何かというところから、魚に痛覚(感覚)はあるけど果たして人間みたいに「痛い!」と感じるのかとか、痛いときに精神的な苦痛も受けるのかとか、いろんな角度から魚の痛覚に関する議論が繰り広げられています。

魚は痛みを感じるかもしれない?

2019年現在においては、最新の研究(論文32)による「魚も人間に近い痛みを感じている可能性が極めて高い」という見解が支持されており、このような研究の進展を受けてスイスでは、ロブスターを生きたまま熱湯に入れることを禁止する法律ができるなどしています。

真実はお魚さんしか知らない

しかしながら、過去には魚の痛覚を疑問視する学説も多かったことや、現在においても魚が痛みを感じていると100%証明されたわけではないことなどから、今も「お魚は痛みを感じない」と考える人も一定数います。

こうした考えをもとに、「動物はかわいそうだけど、魚はそれほどでも」と判断して、動物愛護的な動機で実践するペスカタリアンもいます。

ベジタリアンは難しいと考える

ペスカタリアンと比べて食べられるものが少ないビーガンやベジタリアン
ペスカタリアンの中には「ベジタリアンやヴィーガンは難しいけれど、お肉を抜くだけならできるかも」という理由で実践している人もいます。

先述したように、魚介類を食べられるペスカタリアンは、ヴィーガンなどと比較すると外食の際に困ることも少なく、実践ハードルの低い菜食主義です。

栄養不足に陥りにくいペスカタリアン

普通の食生活からいきなりヴィーガンやベジタリアンを始めることは、栄養学に関する一定の知識がないと、栄養不足に陥るリスクの高い選択とも考えられます(論文33, 論文34, 論文35)。

ビタミンB12やカルシウム、DHAやEPAなどいつくかの必須栄養素は、通常の食生活では主に動物性食品から摂取しているため、植物のみのヴィーガンやベジタリアンは、こうした栄養素の摂取不足に注意する必要があります。

一方で、魚介類を取り入れた食生活ではこれらの栄養素をより簡単に摂取できるため、「ヴィーガンは難しいけどこっちなら」と、栄養学的視点からペスカタリアンを選択する人もいます。

生活に支障が出にくいペスカタリアン

さらに、ヴィーガンやベジタリアンは、普段食べていたものの多くが突然食べれなくなってしまうことから、家族や友人との食事や、仕事上の会食の際などにも苦労することがあります。

いろんな食べ物に対して「これは食べられないや。あ、これは大丈夫かと思ったけど出汁が…」なんてことを気にしなくてはいけないヴィーガンは、例え自分自身がその制限を苦にしていなくても、「相手に迷惑をかけてしまっている…」と申し訳なさを感じる方も少なくありません。

一方のペスカタリアンであれば、多くの飲食店で食べられるメニューを見つけることができるため、社会生活においても支障が出にくい食生活と言えます。

菜食へのステップとしてのペスカタリアン

このような実践のしやすさを理由に、ベジタリアンやヴィーガンに興味がある人が、第一ステップとしてペスカタリアンを実践する例もあります。

アメリカのR&B歌手であるニーヨ(Ne-Yo)もその一人で、彼は2013年から約4年間のペスカタリアン生活を経て、2017年にヴィーガンになったと話しています

ペスカタリアンのデメリット

魚介類を食べるペスカタリアンのデメリット

上述の通り、ペスカタリアンはダイエットや健康、環境問題、動物福祉などの観点から、利点の多い食生活だと捉えることができます。

その一方で、魚介類を多く摂取することの問題点も存在します。

ここからはペスカタリアンのデメリットにも目を向けてみましょう。

魚介類による健康被害の可能性

ペスカタリアンを実践する際に注意が必要なのは、魚介類に含まれる水銀やPCB(ポリ塩化ビフェニル)、ダイオキシンなどの有害物質です(論文36, 論文37, 論文38)。

これらの有害物質は食物連鎖の過程で魚の体内に濃縮され、その魚を食べることで人間の体内にも入ってきます。

※生物蓄積(Bioaccumulation)と言って、食物連鎖を繰り返すことでこれらの有害物質の濃度が上がります(論文39)。この濃縮効果によって、水銀などの有害物質は食物連鎖の上の方にいる魚に特に多く含まれます。

お魚に含まれる水銀などの有害物質

通常の摂取量であれば健康被害の可能性は低いと考えられていますが、高濃度の水銀に起因する脳機能障害や高血圧症等のリスクなどが世界的に問題視されています(論文40, 論文41, 論文42, 論文43, 論文44, 論文45, 論文46)。

こうした事情から日本でも、厚生労働省が妊婦さんには「マグロは週に1回(80g)まで」などの摂取上限を設けていて、お魚には健康メリットもある一方で、摂取量に気をつけるべき食品でもあります。

お魚に含まれるマイクロプラスチック

水銀などの有害物質に加えて、最近耳にすることも増えたマイクロプラスチックについても留意する必要があります。

2019年の最新の研究では、一人当たり毎週約5グラムのプラスチック(クレジットカード1枚分)を体内に取り込んでいると示されています(論文47)。

マイクロプラスチックは様々な食品や飲料、さらには空気中にも含まれると考えられていますが(論文48)、最も大きなマイクロプラスチック源がお魚です(論文49)。

健康被害に繋がる可能性も?

マイクロプラスチックが人体に及ぼす影響の研究はあまり進んでおらず、これがもたらす健康被害は未だはっきりとわかっていません。

一方で、体内に取り込んだマイクロプラスチックが肝臓や腎臓などの臓器に蓄積されることや(論文50, 論文51, 論文52)、プラスチックに含まれるBPA(ビスフェノールA)がホルモンバランスなど健康状態に悪影響を及ぼすことなどがわかっています(論文53)。

今後研究が進むにつれて、なんらかの健康障害や疾患との関連性が示されることもあるかもしれません。

漁業・養殖業による環境問題

乱獲による魚の枯渇問題はペスカタリアンのデメリット
お肉を食べないことによって、地球温暖化への影響が軽減できるのは先述の通りですが、お魚をたくさん食べるペスカタリアンが留意すべき環境問題もいつくかあります。

その一つが、乱獲による漁場の枯渇です(論文54, 論文55, 論文56, 論文57)。

海から魚の数が減っている?

私たち人間は、毎年約1億7,000万トンの魚介類を消費しているのですが、このような大量消費の影響で、漁場の7%が2004年時点で枯渇し、2015年時点には33%が枯渇の危険性が高い乱獲域(Overfished)であると、国連が報告しています(論文57, 論文58)。

現在は漁法の見直しや国際的枠組みでの漁獲量の制限など、問題解決のために様々な取り組みが進められていますので、決して「魚介類を食べる = 悪」というわけではありません(論文56, 論文59, 論文60)。

ただ、魚の消費がこのような状況にも繋がっているということは、ペスカタリアンを実践する上で頭のどこかに入れておいても良いかもしれません。

養殖では沿岸環境が悪化?

「海の魚が減っているなら、養殖なら問題なし?」と考えることもできますが、そうとも言い切れないケースもあります。

海から魚を引っ張り出さない養殖であれば、確かに一般的な漁業よりも枯渇問題への影響が低いと言えますが、養殖場開拓による沿岸環境の破壊や、防カビ剤や抗生物質等の薬品による周辺の生態系への悪影響などが懸念されています(論文61, 論文62)。

ただし、これも全ての養殖が当てはまるというわけではありませんので、環境に配慮されているかどうかは個々の事業者次第となります。

まとめ

いかがでしたでしょう。

様々な動機によって実践される、魚OKな菜食主義のペスカタリアン。

お肉を減らすことによるメリットがある一方で、気をつけるべき点もいくつかあるこの食生活ですが、「やってみようかな」と感じるようなポイントはありましたでしょうか?

基本的には肉食よりも健康的と考えられるペスカタリアンですが、もともと食べていたお肉の部分を「全て魚に置き換える」のような食生活では、逆に体に悪影響のある水銀などを多く摂取してしまう危険性もあります。

魚介類は献立に残してその美味しさを楽しみながらも、それまで食べていたお肉の代わりには野菜や豆など食べるようにしたり、お魚のデメリットを減らせるようにも意識すると、より安全に実践できるかと思います。

また、ペスカタリアンは、日常生活に支障をきたしにくい菜食主義ですので、ベジタリアンやヴィーガンに興味のある方は、まずはここから始めてみるのも良いかもしれません。