栄養不足などの懸念から、「不健康だ」ともささやかれるヴィーガンやベジタリアンなどの菜食主義者。
数ある栄養素のなかでも特にタンパク質(プロテイン)は、植物だけの食生活ではどう頑張っても不足しそうなイメージも。
植物性のタンパク質は、引き締め効果や腸内環境の改善などのメリットも噂される一方で、アミノ酸バランスの観点などから動物性に劣ると考えられています。
が、実はあることに気を付けるだけで、植物だけでも動物性と同等に質の高いタンパク質を摂取することが可能になります。
最も一般的なホエイプロテイン(牛乳由来)が身体に合わないケースも多く、植物性で質の高いタンパク質が摂取できるなら是非取り入れたいところ。
そこで今回は、植物性タンパク質であるプラントプロテインの特性や注意点、そして、ヴィーガンでありながらも良質なタンパク質を摂取するためのコツをお届けします。
目次
ヴィーガンに不足しがちなタンパク質
タンパク質(英語ではProtein:プロテイン)は、私たちの筋肉の成長に欠かせないだけでなく、皮膚や髪、爪、内臓など、身体のあらゆる部位を構成する栄養素。
それだけでなく、タンパク質は免疫機能や神経伝達、ホルモン分泌などにも重要な役割を担う、大切な栄養素のひとつです(論文1, 論文2, 論文3, 論文4, 論文5, 論文6, 論文7)。
そんなタンパク質が不足してしまうと健康に様々な悪影響を及ぼすと言われ、毎日の食事からしっかりと摂取しておきたい栄養素です。
動物性食品が最も優秀なタンパク源?
タンパク質が豊富な食材の代表格は、なんと言ってもお肉やお魚、卵などの動物性食品。
動物性の食品は、地球上で最も優れたタンパク源と言っても過言ではなく、それらを一切摂取しないヴィーガンやベジタリアンなどの菜食主義者はタンパク質不足が懸念されることも多々あります。
実際に、菜食主義の栄養に関する研究でも、「植物だけの食生活ではタンパク質が少なくなりがち」という結果が示されていたり、ヴィーガンのタンパク質不足は単なる噂ではありません。
植物性タンパク質のメリットも?
懸念も多い菜食主義ですが、結論から言うと、例えヴィーガンであっても動物性同等に質の高いタンパク質を摂取することは可能です。
逆に、お肉や乳製品、卵などの動物性食品をタンパク源とする食生活では、動物性特有のホルモン物質(IGF-1)や乳糖、コレステロールなどによる健康リスクの懸念が高まる可能性も。
日々のタンパク源を動物性から植物性に置き換えることは、タンパク質のメリットはそのままに、疾患リスクなどのデメリットの低減に繋がる可能性を秘めていると考えられています。
菜食主義で筋肉増強は不可能?
また植物性のプロテインは、一般的に「ダイエット向け」のようなイメージもありますが、動物性のタンパク質と同じくバルクアップ(筋肉増強)も可能なタンパク質です。
植物性タンパク質が減量に向いているのも間違いではないですが、「筋肉を増やす目的には向かない」というのは少し的外れな主張です。
もちろん植物性だけで筋肉を増強させるためには、後述するいくつかの点に注意も必要ですが、完全菜食主義で筋肉増強に成功したヴィーガンボディービルダーも簡単にご紹介します。
※ ダイエットや筋力増強などの身体の変化には、タンパク質摂だけでなく、摂取カロリーやトレーニング負荷、体質、その他の生活習慣など様々な要素が関係しています。
完全菜食のボディービルダーたち
上の写真はヴィーガンボディビルダーとして有名なニーマイ・デルガド氏(Nimai Delgado)。
他にも、下記のトーリ・ワシントン氏(Torre Washington)、ステファニー氏(Stefanie)など、海外では菜食主義で筋肉増強を実践することも珍しくありません。
ヴィーガンは他の栄養不足にも注意
しかしながら、植物中心の食生活はタンパク質が不足しやすい傾向にあることは先述の通りで、植物から良質なタンパク質を摂取するコツはしっかりとおさえておきたいところ。
また、ヴィーガンなどの菜食主義においては、ビタミンB12やビタミンD、オメガ3脂肪酸など、タンパク質以外の栄養素も不足しやすい傾向にあると言われています。
プラントベースな食生活の健康メリットを享受しながら、栄養失調等のリスクを最大限低くできるよう、他の栄養素については別記事も読んでみていただければと思います。
なぜヴィーガンはタンパク質不足になりやすい?
一般的に、動物性食品なしでは不足しやすいタンパク質ですが、人間に必要な栄養素は全て植物で摂取可能なことは、研究論文レベルでも示されています(論文28, 論文29, 論文30, 論文31, 論文32)。
まず、植物性の食品の中で、どの食べ物にどれくらいのタンパク質が含まれているかチェックしてみましょう。
ヴィーガン向けタンパク質食材10選
ヴィーガンでも食べることができ、スーパーなどでも比較的簡単に入手可能な食材に絞って、タンパク質が多い順に10個の食材を一覧にしてみます。
また、比較のために牛肉などの動物性食品のタンパク含有量も載せておきます。
食材 | タンパク質 |
---|---|
かぼちゃの種 | 26.5g |
ピーナッツ(落花生) | 25.4g |
アーモンド | 20.3g |
ひまわりの種 | 20.1g |
チアシード | 20.0g |
カシューナッツ | 19.8g |
納豆 | 16.5g |
オートミール | 13.7g |
枝豆(茹で) | 11.5g |
そら豆(茹で) | 10.5g |
食材(動物性) | タンパク質 |
豚肉 | 19.7g |
牛肉 | 16.5g |
鶏肉 | 17.3g |
卵 | 12.9g |
牛乳 | 3.3g |
含有量は100gあたりで、数値は全て日本食品標準成分表より。肉類のタンパク質量は部位により異なります。
豆類やナッツ、シードに豊富なタンパク質
上のリストを見てみると、植物性の食材であっても意外と多くのタンパク質が含まれていることがわかります。
特に以下の4つの食品群が、植物性のなかでは高タンパクな食材と言えるでしょう。
- シード類:かぼちゃの種、チアシードなど
- ナッツ類:ピーナッツ、アーモンドなど
- 豆類:納豆(大豆)、そら豆など
- 穀物:オートミールなど
シード類では健康食品としても注目されるかぼちゃの種やチアシードに多く、ナッツ類では、ビタミンEが豊富なアーモンドやピーナッツも優れたタンパク源です。
また、リスト以外でも高野豆腐(水煮)に10.7g(成分表)、木綿豆腐に7g(成分表)、緑黄色野菜のブロッコリーにも4.3g(成分表)と、幅広い食材にタンパク質が含まれています。
50%以上タンパク質の大豆ミート
他にも、加工食品のためリストには入れていませんが、大豆からできたソイミート(大豆ミート)は、なんと固形分の半分以上がタンパク質です(100gあたり59.3g*)。
タンパク源の代表格である牛肉でも100gあたり約17gのタンパク質(成分表)、卵でも約13gですので、動物性食品以上に高タンパクであることがわかります(成分表)。
含有量では負けず劣らずな植物性タンパク質。ですが、それでもなぜ植物性タンパク質は「動物性に劣る」と言われるのでしょうか?
その理由は、タンパク質が量より質が大切な栄養素であるためです。もう少し掘り下げてみましょう。
※ 大豆ミートのタンパク質は乾燥時の数値ですので、茹でる前の重量で計算してください。
植物にもタンパク質は豊富!だけど…
以下のふたつの食品を比較した時、タンパク源として優れているのはどちらだと思いますか?
- 納豆100g(タンパク質16.5g)
- 茹で卵100g(タンパク質13g)
当然ながら、タンパク質の量が多い納豆の方が、優秀なタンパク源と考えるのが普通でしょう。
しかし、タンパク質のクオリティ(質)で比較してみると、実は卵の方が優れているという見方もできます。
タンパク質は20種類のアミノ酸の集合体
ご存知の方も多いかもしれませんが、タンパク質という栄養素は、実は20種類ものアミノ酸のかたまりです。
それぞれのアミノ酸が様々な役割を持って体内で働いていて、アミノ酸はタンパク質の良し悪しを決める非常に大切な要素になります。
上の納豆と卵の比較で触れたタンパク質のクオリティとは、このアミノ酸がどれだけ均等に含まれているか、すなわち「アミノ酸バランス」のことを指しています。
要は、タンパク質の総量は卵の方が少ないけれど、納豆より卵の方がアミノ酸バランスが良く、「総合的に見ると卵の勝ち」ということになるのです。
※ あくまで「タンパク質」だけに焦点を当てて比較しています。納豆には食物繊維やファイトニュートリエント(植物栄養素)など、健康に寄与すると考えられている栄養素も多数含まれます。「どちらが身体に良いか」の比較ではありません。
大切なのは量よりアミノ酸バランス
筋トレをしている方であれば、BCAAやアルギニン、リジンなどというワードを目にしたこともあるかもしれませんが、それらはどれもタンパク質を構成しているアミノ酸の名称です。
全部で20種類あるアミノ酸ですが、そのうち11種類は私たちの体内で作り出すことができるため、食べ物などから摂取する必要がありません。
一方で、残りの9種のアミノ酸については、私たちの体内で作ることができないタイプで、食べ物などを通して必ず外から摂取しなくてはいけない必須アミノ酸です(論文33)。
9種の必須アミノ酸一覧
タンパク質の良し悪しを決める上で重要なのは、後者の必須アミノ酸になります。
名前を覚えたりする必要性はありませんが、9種類を一覧でも確認してみましょう。
- バリン
- ロイシン
- イソロイシン
- スレオニン
- メチオニン
- リジン
- フェニルアラニン
- トリプトファン
- ヒスチジン
このうちバリン、ロイシン、イソロイシンの3種をまとめてBCAA(分岐鎖アミノ酸)と呼ぶこともあり、サプリメントなどで見かけたこともあるかもしれません。
9種類の必須アミノ酸は、どれも筋肉の成長に欠かせないことはもちろん、代謝や免疫機能、神経伝達やホルモン分泌などにも重要な役割を担っていると考えられています(論文13, 論文14, 論文27, 論文34, 論文35, 論文36, 論文37, 論文38, 論文39)。
植物性タンパク質はアミノ酸バランスが悪い?
先述した通り、植物性の食品にも、お肉に劣らないほど多量のタンパク質が含まれていることは事実です。
ですが、必須アミノ酸全てをバランス良く含む食品の方がより質の高いタンパク源と考えられ、その結果、納豆と卵では「タンパク質が少ない卵の方が優秀」となってしまうのです。
具体的にヴィーガンのタンパク質は何が不足しているのか、そして、どうすれば補うことができるのか、植物性タンパク質をアミノ酸レベルでもチェックしてみましょう。
不完全タンパク質の植物性食材
まず、お肉やお魚、卵などの動物性のタンパク質には、基本的に9種の必須アミノ酸が全て含まれており、こうした食品は完全タンパク質(Complete Protein)と呼ばれます。
一方で植物性タンパク質は、9種類の必須アミノ酸のうちどれかが欠けているという特徴を持っています。
このようタンパク食材は不完全タンパク質(Incomplete Protein)と呼ばれ、一般的に多くの植物性食品がこれに該当します(論文40)。
※「欠けている」という表現をされる不完全タンパク質ですが、「必須アミノ酸のどれかがゼロ」というわけではありません。植物にも全ての必須アミノ酸は含まれていますが、どれかが少ない構造をしています。
大豆はアミノ酸スコア100!だけど…
全ての植物が不完全タンパク質という訳ではなく、大豆やキヌア、蕎麦の実など、一部の植物は9種類全ての必須アミノ酸を含む完全タンパク食品とされています(論文41)。
この中でも大豆は「アミノ酸スコア100」「畑の肉」などとも称され、植物性食品の中では特に優秀なタンパク源だと認識されています。
しかしながら、植物の中では超優等生の大豆ですら、動物性食品と必須アミノ酸値で比較してみると、以下のような弱点が見えてきます。
食品 | メチオニン |
---|---|
鶏ササミ肉 | 297mg |
大豆 | 151mg |
タンパク質10gあたりの含有量。数値は日本食品標準成分表のデータを元に算出。
鶏肉と大豆で、同じ10gのタンパク質に含まれる必須アミノ酸を比較してみると、必須アミノ酸のひとつであるメチオニン含有量に大きな差があることがわかります。
同じ量のタンパク質でも、大豆からはササミの約半分ほどのメチオニンしか摂取できないのです。
※ トリプトファンなど、鶏ササミよりも大豆に若干多く含まれている必須アミノ酸もあります。
必須アミノ酸のアンバランスが根幹に
大豆は、植物では稀な完全タンパク食品で、乾燥状態ではタンパク質33.8gと、鶏ササミ肉よりもタンパク質が多いです(成分表)。
そんな大豆であっても、アミノ酸レベルで動物性と比較すると弱点があり、この特性が、植物性タンパク質が劣ると言われる背景にあります(論文42)。
でも、だからと言って「植物だけでは良質なタンパク質が摂取できない」というわけでは全くありません。
ここからは、この植物性タンパク質の弱点を強みに変える、ヴィーガンで良質なタンパク質摂取を実現するポイントをご紹介します。
ヴィーガンで良質なタンパク質をとるコツ
100%植物性な食生活を送るヴィーガンですが、実はあることに気をつけるだけで、動物性と同様に全ての必須アミノ酸をバランスよく摂取することが可能です。
その「あること」というのが、複数のタンパク食材を組み合わせることです。
上で植物性タンパク質の弱点について触れてきましたが、これはあくまで食材単体に当てはまることであり、組み合わせによって補完することが可能です。
さらに詳しくみていきましょう。
組み合わせで必須アミノ酸強化
先述の通り、基本的に必須アミノ酸のどれかが欠けている植物性タンパク質ですが、「どの必須アミノ酸が少ないか」は食材ごとに異なります。
具体的には、大豆などの豆類はメチオニンが欠けている食品ですが、シードやナッツなどの種実類や、穀物などはメチオニンが豊富(参考)。
逆に、ナッツやシードなどの種実類や穀物はリジンやスレオニンと呼ばれる必須アミノ酸に欠けた食材ですが、豆類はこれらを含みます。
要は、豆や種実類、穀物など幅広い食品群からタンパク質を摂取すれば、欠けている必須アミノ酸を補い合うことができるのです。
食材間で補完し合える必須アミノ酸
「大豆だけ」や「ナッツだけ」など、ひとつの食材から集中的にタンパク質を摂取するような食生活では、上記の特性上、必須アミノ酸のどれかが欠けた状態になりがちです。
しかし、それぞれの植物の強み・弱みを踏まえ、単一食材に偏ることなく多様な食材を取り入れれば、植物性だけでも動物性同等のアミノ酸摂取が可能と考えられています。
菜食主義が広く浸透する欧米において、この考え方は常識ですが、冒頭で紹介したヴィーガンボディービルダーたちも、こうした食品郡のバランスに気をつけた食事を推奨する発信をしています。
手軽にとるなら複合プロテイン
食品群別のタンパク質ランキングを下で紹介しますが、最も確実にアミノ酸バランスを高めるにはプロテインが便利です。
植物性のプロテインにも様々な種類がありますが、一般的なソイプロテインのような「豆だけ」のタイプではなく、「豆 + 穀物」など複数の植物タンパクを複合したものを選ぶのがポイントです。
下記のアノマ(ANOMA)はえんどう豆と玄米タンパクをブレンドしていて、アミノ酸バランスを高めるために理想的と言えます。
もちろん、プロテインには頼りたくない方もいらっしゃると思います。
ここからは、サプリに頼らず、食事から良質なタンパク質が摂取できるよう、食品群ごとの高タンパク食材リストをみていきましょう。
ヴィーガンが食べるべき4つの食品群
豆類、ナッツ、シード、そして穀物の4種類を満遍なく摂取することで、動物性同等のクオリティに高めることが可能な植物性のタンパク質。
植物中心の食生活を送る方も、これから菜食主義を試すという方も、日々の献立の参考に、各食品群ごとにタンパク質含有量トップ5をチェックしてみましょう。
豆類:大豆製品、レンズ豆など
食材 | タンパク質 |
---|---|
大豆(蒸し) | 16.6g |
納豆 | 16.6g |
レンズ豆(茹で) | 11.2g |
そら豆(茹で) | 10.5g |
ひよこ豆(茹で) | 9.5g |
含有量は100gあたりで、数値は全て日本食品標準成分表より。
手軽に入手でき、様々な料理にも使える便利な植物性のタンパク食材と言えば、やっぱり大豆などの豆類。
納豆などの大豆製品だけでなく、豆類は総じてタンパク質が豊富な食品で、レンズ豆(レンティル)やそら豆も優秀なタンパク源です。
リスト以外にも茹でた枝豆に11.5g(成分表)、水煮の高野豆腐に10.7g(成分表)のタンパク質が含まれています(100gあたり)。
ただし、高タンパク質な豆類も基本的には不完全タンパク質で、必須アミノ酸のメチオニンが少ないことに留意が必要です。
シード類:かぼちゃの種、チアシードなど
食材 | タンパク質 |
---|---|
かぼちゃの種 | 26.5g |
亜麻仁 | 21.8g |
ゴマ | 20.3g |
ひまわりの種 | 20.1g |
チアシード | 20.0g |
含有量は100gあたりで、数値は全て日本食品標準成分表より。
豆類に足りないメチオニンの補完も期待できるのが、かぼちゃの種やチアシードなどの種子類です。
種子類もその多くがタンパク質が豊富な食材に挙げられ、オメガ3脂肪酸のαリノレン酸で有名な亜麻仁(アマニ)もタンパク源として優秀です。
ただ、メチオニンを一定量含んでいる一方で、シード類はリジンが少ない食品群であることに留意が必要です。
また、BCAAのバリンとロイシン、イソロイシンについても、豆類と比べると少なめな傾向にあります。
ナッツ類:アーモンド、カシューナッツなど
食材 | タンパク質 |
---|---|
ピーナッツ* | 25.0g |
アーモンド | 20.3g |
カシューナッツ | 19.8g |
ピスタチオ | 17.4g |
くるみ | 14.6g |
含有量は100gあたりで、数値は全て日本食品標準成分表より。
アーモンドやカシューナッツ、ピスタチオなどのナッツ類も、ヴィーガンのタンパク補給として便利な食材です。
リスト以外にも、ヘーゼルナッツには13.6g(成分表)、マカダミアナッツには8.3gのタンパク質(成分表)が含まれています。
しかし、豆類に足りないメチオニンを補える一方で、リジンなどの必須アミノ酸が少ない傾向にあることに留意が必要です。
また、ナッツは脂肪分が多い食材ですので、カロリーやオメガ6脂肪酸、飽和脂肪酸などの過剰摂取にも気を付けると良いでしょう。
※ ピーナッツ(落花生)はマメ科に属しているため、豆に不足する必須アミノ酸(メチオニン)の補強には適していません。
穀類:オートミール、キヌアなど
食材 | タンパク質 |
---|---|
オートミール | 13.7g |
キヌア | 13.4g |
大麦(押し麦) | 10.9g |
玄米 | 10.1g |
ひえ | 9.4g |
含有量は100gあたりで、数値は全て日本食品標準成分表より。リストは全て乾燥時の数値ですので、調理前の重量で計算してください。
オートミールやキヌア、玄米などの穀物も比較的タンパク質が豊富な食材で、豆類に欠けているメチオニンが含まれる食品群です。
一方で、穀類も不完全タンパク質であり、リジンやスレオニンなどが少ないことに留意が必要です。
また、上記の数値は乾燥時のものですので、調理すると水分を含んでタンパク質の含有率が減少します。
この点も踏まえた上で、リストの数値を参考にしてみてください。
※キヌアは茹で後の重量で100gあたり4.4gのタンパク質、玄米は炊いた後の重量で100gあたり2.7gのタンパク質になります。数値はUSDAより。
そもそもタンパク質は何グラム必要なの?
必須アミノ酸のバランスに気をつけることで、植物だけでも良質なタンパク質の摂取が可能であることは先述の通り。
では、1日にどれくらいの量のタンパク質を摂取すればいいのでしょうか?
1日50g〜60gのタンパク質が目安
この答えは厚生労働省が示していて、日本人は1日あたり以下のタンパク質の摂取が推奨されています。
- 女性:50g
- 男性:60g
いずれも20歳以上の成人が対象ですが、身体の大きさも関係して、女性の方が若干少なめに設定されています。
タンパク質は本当はもっと必要?
「1日あたりタンパク質50g〜60g」というのは、厚生労働省が発表している数値ですので、これを目安にすればまず問題はないと考えていいでしょう。
ただ、アメリカなどのフィットネス先進国の指標を参考にしてみると、タンパク質の必要量は以下の3つによって大きく増減するとも考えられます。
- 身体の大きさ(体重)
- 運動量
- 目的
もちろん体質なども関係しますので一概には言えませんが、より厳密に自身のタンパク質の推奨量を知りたい方のために、もう少し掘り下げてみます。
体重ごとに変わるタンパク質推奨量
日本では「全員一律50g〜60g」となっているタンパク質の推奨量。
ですが、国際的には個人の体格等に合わせて体重1kgあたりに必要なタンパク質として算出されることも一般的です。
そこで、米国ハーバード大学も推奨するタンパク質の1日摂取量目安を見てみます。
- 体重1kgあたり0.8gのタンパク質
当然ながら、体の大きさによって必要なエネルギーも違いますし、自身の体重に基づいてタンパク質の必要量を計算した方が、より正確な気もしますよね。
体重に比例して増えるプロテイン必要量
上記の数値をもとに計算してみると、もし体重が50kgなら1日のタンパク質摂取量目安は40gになります。
この計算式を使った、体重別のタンパク質摂取量目安を一覧にしてみます。
身体の大きさ | タンパク質摂取量 |
---|---|
体重40kg | 32g |
体重45kg | 36g |
体重50kg | 40g |
体重55kg | 44g |
体重60kg | 48g |
体重65kg | 52g |
体重70kg | 56g |
体重75kg | 60g |
体重80kg | 64g |
※ 本サイトが独自に計算した値であり、厚生労働省が推奨するものではありません。
こうしてみると、体重40kgの人と体重80kgの人では、必要なタンパク質のが倍になっていることがわかります。
あくまで参考程度ですが、これ以外にも計算方法は様々ありますので、次に運動量に応じたタンパク質必要量もチェックしておきましょう。
運動量で増えるタンパク質推奨量
上記の数値は、運動をしない普通の生活者を対象としていますが、普段から運動を実践する人やアスリートは更に多くのタンパク質が必要だとも考えられています(論文48, 論文49, 論文50, 論文51, 論文52, 論文53, 論文54, 論文55)。
例えば、ランニングなど持久系トレーニングを行うアスリートの場合には以下が推奨されたりもします。
- 体重1kgあたり1.4gのタンパク質
International Journal of Sport Nutrition
高負荷系アスリートはもっと多く必要に?
また、ウェイトトレーニングなど高負荷系の運動実施者には、さらに多くの摂取が推奨されることもあります。
- 体重1kgあたり1.8gのタンパク質
International Journal of Sport Nutrition
タンパク質の必要量に関しては様々な議論があるのも事実ですが、上記の数字をもとに、タンパク質摂取量を一覧で確認してみましょう。
運動実施者向けタンパク質推奨量
身体の大きさ | 持久系 | 高負荷系 |
---|---|---|
体重40kg | 56g | 72g |
体重45kg | 63g | 81g |
体重50kg | 70g | 90g |
体重55kg | 77g | 99g |
体重60kg | 84g | 108g |
体重65kg | 91g | 117g |
体重70kg | 98g | 126g |
体重75kg | 105g | 135g |
体重80kg | 112g | 144g |
※ 論文の記述を基に本サイトが独自に計算した値であり、厚生労働省が推奨するものではありません。
運動強度に合わせた摂取を意識
こうして一覧にしてみると、最初にご紹介した厚生労働省の推奨量よりも遥かに多いことがわかります。
もちろん日本人は厚生労働省の基準に従うのが最善と考えられますが、海外の論文を参考にする全く違った数字も見えてきます。
あくまで参考程度にしかなりませんが、最後にもう1パターン、バルクアップ時の必要量もチェックしておきましょう。
バルクアップ(筋肉増強)時のタンパク質推奨量
体重、さらには運動強度によっても増減するタンパク質の必要量ですが、目的によっても推奨量は異なってきます。
例えば、痩せたり身体を絞るためにジムに行く人もいれば、「筋肉をつけてカラダを大きくしたい」という目的でジムに通う人もいますよね。
人それぞれに異なる運動の目的ですが、その中でも最も多くのタンパク質が必要とされているのが、バルクアップ(筋肉増強)を目的としたトレーニングです。
新しい筋肉を作るための栄養素
「筋肉をつけるために最善のプロテイン摂取量」についても様々な議論がありますが、ある論文では下記の摂取量がベストだということも示されています。
- 体重1kgあたり2.2gのタンパク質
Medicine & Science in Sports & Exercise
この数値は先ほどのアスリート向けの推奨量よりも更に多くなっていて、新たな筋肉をつけるためには非常に多くのタンパク質が必要になることが見てとれます。
もちろん体質も個人差がありますし一概には言えませんが、バルクアップ向けの推奨量についても、上記の論文にある数値を参考に一覧で確認してみましょう。
バルクアップ向けタンパク質推奨量
身体の大きさ | タンパク質摂取量 |
---|---|
体重40kg | 88g |
体重45kg | 99g |
体重50kg | 110g |
体重55kg | 121g |
体重60kg | 132g |
体重65kg | 143g |
体重70kg | 154g |
体重75kg | 165g |
体重80kg | 176g |
タンパク質不足で健康被害は?
植物しか摂取しないヴィーガンやベジタリアンでは、不足が懸念されるタンパク質。
筋トレやヨガ、ランニングなど、運動をする人たちのための栄養素とも捉えられがちなタンパク質ですが、実は運動を全くしない方々にとっても欠かすことのできない大切な栄養素です。
念のため、タンパク質が不足した状態が続くと、身体にどのような影響を及ぼすのかも確認しておきましょう。
タンパク質が足りていない体のサイン
筋肉だけでなく、タンパク質が免疫などの様々な身体機能と関連していることは前述の通り。
そんなタンパク質が不足することで引き起こされる可能性のある症状として、主に以下の4つが考えられます。
- 筋力の低下
- 肌や爪、髪の毛のトラブル
- 免疫機能の低下
- 骨密度の低下
それぞれの症状について、詳しくみてみましょう。
タンパク質不足による筋力低下
筋肉を増強させるためにはタンパク質(プロテイン)が欠かせないことは既にお伝えした通りですが、タンパク質が必要なのは筋トレをする人たちだけではありません。
タンパク質が不足すると、日常生活に必要な筋力の低下をも引き起こしてしまう可能性が言われています(論文8, 論文9, 論文10, 論文11)。
高齢者は特に要注意なタンパク不足
普段の通勤、通学時の歩行や階段の昇り降りなど、日常生活のあらゆる場面で筋肉は働いています。
タンパク質が不足して筋肉量が落ちてしまうと、そうした生活の様々な場面に影響を及ぼす可能性もあり、「疲れやすい」「力が入らない」などの症状に繋がることも考えられます。
また、筋力低下が懸念される高齢者においては、通常よりも更に多く、最大1.5倍程度のタンパク質摂取が推奨されることもあります(論文, 論文)。
タンパク質が必要なのは筋トレだけじゃない
もちろん、疲れやすいなどの症状の理由はタンパク質不足だでなく、他の栄養素の不足や睡眠の質、生活習慣等も大きく関係しています(論文12)。
ですが、多くの人が「私は筋トレしてないから別に大丈夫」と考えがちなタンパク質も、生活の基盤に関わる栄養素です。
もしヴィーガンなどの菜食主義を始めた以降に体力低下を感じるようになった場合には、タンパク質を摂取できているかもチェックしてみるといいかもしれません。
タンパク質不足による美容トラブル
タンパク質は、皮膚や爪、髪の毛を構成する材料になっていて、美肌に欠かせないコラーゲンの原料もタンパク質です(論文13, 論文14)。
タンパク質が不足すると、お肌や髪、爪などの健康状態にも悪影響が出てくる可能性が考えられます(論文8, 論文15, 論文16, 論文17)。
タンパク質不足で髪や爪が脆くなる?
具体的にはタンパク質が不足すると、以下のような箇所にも影響すると考えられいます(論文16, 論文17)。
- お肌のカサつき
- 髪の毛が細くなる
- 爪が脆くなる
もちろん髪の毛や爪、お肌などのトラブルには、鉄分やビタミンなど他の栄養素も関係していて、タンパク質不足だけが原因ではありません(論文17, 論文18)。
が、植物中心の食生活をする中で「肌の調子がよくない」「髪が細くなった」「爪が柔らかくなった」などの変化を感じる場合には、タンパク質不足の可能性もチェックしてみると良いかもしれません。
タンパク質不足による免疫力低下
筋肉や肌、爪や髪の毛の健康を左右するタンパク質ですが、私たちの免疫機能とも深く関連している栄養素です。
コロナ禍で再び注目を集めるようにもなった免疫機能ですが、タンパク質が不足すると免疫力が下がるということを示唆する研究も、いくつか存在します(論文3, 論文4, 論文19, 論文20)。
タンパク質不足で風邪を引きやすくなる?
免疫力についても様々な要素が関係していて、もちろんタンパク質だけで免疫機能がアップするなんてことはないでしょう。
ただし、「タンパク質摂取量が著しく低いと、インフルエンザの症状が通常より悪化する」ということを示唆する研究もあり、その重要性は様々な形で示されています(論文21)。
風邪をひきやすくなったと感じたり、風邪が長引くように感じたら、可能性として一度、タンパク質が足りているかも気にしてみるといいかもしれません。
※ 風邪などの症状がある場合は医師に相談してください。
タンパク質不足による骨密度低下
私たちのイメージ通り、骨の健康にはカルシウムが欠かせません。
ですが、意外にもタンパク質も骨の健康と密接に関わっている栄養素の一つで、タンパク質の不足によって骨が弱くなる可能性を示唆する研究も存在します(論文22, 論文23, 論文24)。
逆に、タンパク質の摂取量を増やすことで骨折のリスクが低下する可能性を示した研究もあったりします(論文25, 論文26)。
骨の健康にはビタミンDも重要
加齢に伴って骨は誰しも弱まっていくものですし、骨折となるとその後の生活に大きな影響を与えてしまうことも。
骨の怪我のリスクを下げるためにも、カルシウムなどを積極的に摂取することと同時に、タンパク質も不足していないか気を付けていきたいところです。
また、カルシウムやタンパク質に加えて、骨の健康にはビタミンDも欠かせません。別記事にある通り、ビタミンDも菜食主義で不足しやすい栄養素の一つですので、こちらも気にしてみると良いかもしれません。
その他の健康被害の可能性も?
これら以外にもタンパク質は、ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達にも重要な役割を担っていて、脳の働きや精神状態などにも関わっていると考えられています(論文27)。
ヴィーガンやベジタリアンなどの菜食主義者に限らず、どんな食生活の人でも十分な摂取を心がけていきたいところですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
筋肉の原料になるだけでなく、身体の様々な部位を構成し、免疫機能や神経伝達などにも深く関係するタンパク質。
単一食材では、動物性と比較して劣ってしまう植物性のタンパク質ですが、それらの特性を知ることで、植物だけでも質の高いタンパク質を摂取できることが見えてきたかと思います。
ヴィーガンやベジタリアンでもタンパク不足のリスクを下げ、そして最高のパフォーマンスを発揮できるよう、幅広い食材からタンパク補給をしたり、ヴィーガン対応のプロテイン等を活用するなどすると良いかもしれません。